◯荒巻隆三君
自由民主党議員団の荒巻隆三でございます。通告に従い、数点にわたり質問いたしたいと存じ上げます。
まず初めに、鴨川の整備と安全利用についてお伺いいたします。
鴨川は、桟敷ヶ岳付近を源とし桂川の合流点に至るまで、京都市内の南北を流れる約33キロの河川として、悠久の歴史の中で、千年の都と京文化をはぐくんできた川であり、今も大都市にあって清澄さを保ち、憩いの場として多くの人に親しまれてきております。京都盆地は地下水が豊富な盆地として知られ、鴨川から供給される地下水は、平安遷都以来、人々に大いなる恵みを与え、鴨川の水や伏流水は、生活用水やかんがい用水として人々の暮らしを支えるとともに、京の水文化の源となって今日までの日本文化を支えてきたといっても過言ではありません。古来、鴨川の河原は、都における数少ない広い空間であったことから、お店や芝居小屋が建ち並び、多くの人々でにぎわいを見せてまいりました。発達した河原は都市の広場の役割を果たすとともに、善阿弥の庭園芸術、観阿弥・世阿弥の能、出雲の阿国の歌舞伎などの文化が生まれ、今も続く納涼床は、京の夏の風物詩として全国的に有名であります。豊かな水は、友禅染や茶の湯などさまざまな伝統的水文化をはぐくみ、美しい川の流れは多くの文人の題材となり、季節とともに移ろう色合いは京の人々に愛され続けた風景であります。それゆえに鴨川と人々とのかかわりの歴史は長く、治水の歴史においても、平安期の白河法皇におかれては天下三大不如意の筆頭に、賀茂の水を挙げておられます。はんらんを繰り返す暴れ川を我々の先人たちは、洪水を避けるべく改修を重ねつつも、良好な環境を守り、鴨川のその美しい景観を大切にしてきたわけでございます。適正に管理されてきた自然を守り、その環境を保全することは、現在の京都の人々にとってのみならず、下流の淀川水系にかかわる人々に対しても、また京都を訪れる人々や次の世代へと引き継ぐためにも極めて重要な課題であります。
このような認識のもと、鴨川に関する条例の策定が進められ、京都府鴨川条例として平成19年6月府議会に提案され、全会一致で可決・成立をいたしました。府民協働と府市協調の必要性を随所に訴え、河川環境を安心・安全で良好かつ快適なものとするため、治水、景観、利用など全般にわたる規制を盛り込んだ本条例は、今後の鴨川のあるべき姿について、府民・事業者と京都市・京都府が参加し、ともに鴨川の未来を考え、幅広く意見を交換する場として、鴨川府民会議の設置を定めて議論を重ねてまいりました。
去る先月10日の第14回鴨川府民会議においては、平成23年度の鴨川の整備について、メーン区間である三条大橋から四条大橋間右岸の高水敷整備についての意見の交換がなされ、今後の整備の考え方として、例えば、「三条大橋から御池大橋間と同様の整備が望ましい」「鴨川納涼や『京の七夕』の会場であり、多くの人々が集うための配慮が必要である」「高齢者の利用に配慮したバリアフリー化が必要」など、意見が出されたわけでございます。どのように本府として受けとめ、今後の施策に反映していくのか、あるいはまた、より有効な形として取り上げていくものなのか、具体的に示していかなければならないと考えております。
そこで、三条大橋から四条大橋間の高水敷整備に関してお伺いをいたします。
平成4年から平成11年にかけて、三条大橋から七条大橋間の鴨川左岸は、京阪電車や琵琶湖疏水の地中化とあわせて、花や木を見ながら散策のできる「花の回廊」が整備されましたが、右岸側の高水敷は、コンクリート製の枠に玉石を敷き詰めた上に土を固めたものでした。このため、本府においては、鴨川公共空間整備基本プランに基づき、拠点箇所の整備の一つとして、御池大橋から三条大橋間右岸高水敷の工事を昨年末から本年春にかけて行われたところであります。私も、最近この箇所を通ってみましたが、凹凸があり、車いすやべビーカーが通りにくかった以前の状況に比べると、通りやすく、府民の方も鴨川を眺めながらゆっくりとくつろがれている状況を見て、改善の効果を実感したところであります。
ことしは、京都の顔とも言える三条大橋から四条大橋間約600メートルの整備に着手する予定でございますが、鴨川の中でも特に観光客の多いところであり、工事期間中、立ち入り制限や景観が損なわれるのではないかという心配の声も聞き及ぶところであります。どのように工事目的や利用制限、期間等、府民や観光客に対しわかりやすく理解が求められる形で進めていくのかが大事であると考えます。
そこで、昨年の工事延長の約3倍の距離がある三条大橋から四条大橋間について、どのような方法やスケジュールで工事を進められようとしているのか、お伺いいたします。
次に、鴨川の安全利用に関してお伺いをいたします。
これから夏にかけての季節は、川の中で遊んだり、魚とりをしたりする子どもたちも多く見かけますが、こうした自然との触れ合いは、子どもの成長にとっても大変重要なものであると考えております。しかしながら、河道には思いもよらない速い流れの場所があったり、深みがあったりします。また近年は、地球温暖化の影響で集中豪雨が多くなっており、都市の河川が急激に増水することもあって、ふだんは身近な遊び場である川が、場合によってはとても危険な場所になってしまうことがあります。
つい先ごろでありますが、鴨川において、増水後の川底が見えにくい流れの中で遊んでいた中学生が深みでおぼれて亡くなるという大変痛ましい事故が発生したところであります。川は楽しい場所であると同時に、一つ間違えれば危険な場所にもなるということを利用者、特に子どもたちや保護者に絶えず呼びかけていただくことが大切ではないかと考えます。
そこで、京都府では、鴨川を安全に利用してもらうために、災害警戒情報等これまでどのような取り組みをされてきたのか、また、今回の事故を踏まえてどのような取り組みをされるのか、お伺いをいたします。
次に、京都の強みを生かした観光の振興についてお伺いをいたします。
3月11日に発生した東日本大震災では、多くの尊い命が犠牲になったことに心からお悔やみを申し上げますとともに、今なお被災地で避難生活を余儀なくされている住民の方々もおられる中、国を挙げて、被災地の復興と生活再建に取り組んでいかなければならないと考えております。
一方で、今回の大震災とそれに続く一連の原子力発電所事故は被災地以外の地域にも大きな影響を及ぼしており、本府においてもさまざまな影響を受けているところであります。特に、京都観光においては、震災直後の混乱が収まった後の自粛ムードや、原発に関する風評被害が影を落とし、国内外の観光客が激減するなど大きな打撃を受けたところであります。観光産業は、宿泊や飲食、交通、物販など非常にすそ野の広い分野であり、そこに従事する方々の雇用の問題にもかかわってくることから、観光客の減少が地域の経済に及ぼす影響は大きいものがあります。迅速かつ効果的な対応が求められていると考えております。
こうした状況を打開するために、さきの5月臨時議会において、京都観光緊急回復対策事業として補正予算を議決したところであり、速やかに事業に取り組んでいただく必要があると考えておりますが、現在の観光客の入り込みの状況と補正予算による京都観光緊急回復対策事業の取り組み状況についてお伺いをいたします。
そしてまた、この難局を乗り越えていくに当たり、京都の底力を生かし、京都観光の魅力を強力にアピールしていくべきだと考えます。8月11日に開催が予定されている「京の七夕」は、京都府、京都市、仏教会、京都商工会議所などのオール京都体制で実行委員会を立ち上げられ、昨年初めて開催されました。この事業では「願いを京都に」をテーマに全国から絵はがき短冊で願い事を寄せていただき、旧暦の七夕を含む10日間、鴨川の御池から四条の間の河畔や堀川などを中心にさまざまなイべントが実施され、70万人を超える方々が来場されたと伺っております。メーン会場だけでなく、各地の商店街で七夕飾りを初めとするさまざまな協賛事業を実施していただき、にぎわいを盛り上げていただきました。
特に、観光集積地型の商店街においては、いかに観光客を取り込んでいくかを問題意識としている中で、商店街やそれを中心とするコミュニティだけが単独で繁栄する時代ではなく、京都のまち全体のにぎわいがあればこそ、商店街も繁栄することができ、商店街のまちづくりの方向性を考えるのであれば、京都のまち全体の将来を展望することが大前提であり、その繁栄に貢献し得ることに価値を見出し、改めてみずからの商店街の特性を全体の中で見詰め直し、今後のビジョン策定のきっかけとなったという商店街も見受けられました。結果、その商店街が置かれている状況というものを、人口規模であるとか、また市場のボリュームであるとか、客層や消費特性も踏まえて、いま一度、客観的に洗い出す作業を通じ、むしろ地域コミュニティが抱えている課題も解決していくことにつながっているといったお声もお聞きをいたしております。厳しい不況の中にあっても日本に京都があって本当によかったと、京都に訪れる人々に感じていただくことに全体の中で責任を分かち合って働いていきたい、先人たちが大切にしてきた歴史ある京都の心意気を守っていきたい、たとえ世の中がどのような変遷をたどろうとも、京都にお越しいただければ日本の美意識に出会えるまちとしてお迎えをしていきたい、それらの思いを真剣に考え実践してくださる府民の皆さんに報いる形で、来月に迫る「京の七夕」に取り組んでいただきたいと思っております。
そこで、お伺いをいたします。開催に当たり、昨年以上に京都を強く発信する事業にしていくため、前回の総括を踏まえて新たな工夫を加えていくべきと考えます。特にことしは、東日本大震災で犠牲となった方々への鎮魂の思いを込めて、東北地方の復興支援としての取り組みも行われるとお聞きをいたしておりますが、具体的にどう展開されるのか、お伺いをいたします。
また、先日、日本料理の世界無形文化遺産の登録に向けて活動を開始されるとの報道を目にいたしました。既に、フランスの美食術やメキシコの伝統料理、地中海料理などは登録されていると伺っているところでありますが、日本料理をこのたびの登録に向けた知事の迅速な対応は機を得たものと高く評価するものであります。今週7月5日には、農水省による「日本食文化の世界無形遺産登録に向けた検討会」が開催され、京都からも数名が委員として出席なさると聞き及んでいます。
そこで、お伺いいたします。日本ブランド発信の観点からも、アピール力のあるこの京都から提案していくことが必要と考えますが、京都府におかれては、日本料理の世界無形文化遺産の登録に向けて、今後どのような展望を持って取り組んでいかれるのか、お伺いをいたします。
次に、東山地区及び祇園地区における交通対策についてお伺いをいたします。
京都は、本日から本格的に日本三大祭の一つである祇園祭のおはやしとともに、暑い夏を迎え、やがて夏が終わると、いよいよ秋の観光シーズンが訪れます。京都の観光地である東山地区において懸念されることは、観光シーズンともなると、東福寺周辺の東大路通りや清水寺周辺の五条通りには何台もの観光バスが列をつくり、平常期における車両の円滑な交通環境は壊滅的な状況となり、地域に暮らす住民を初めとして、観光に訪れた方々でさえも、万一の場合の緊急車両の通行もままならないという状況を大変不安視する声もございます。
あわせて、京都市から、東大路通りの歩道を広げ、車道を狭めるという整備構想が、本年1月に示されたところであり、これが実施されると、観光シーズンの交通渋滞に拍車がかかるおそれも多分にあると考えるところであります。
もちろん、今後は、本府の観光政策についても、東大路通りの整備構想や公共交通機関の活用等を含めて、京都市と十分に協議し、パーク・アンド・ライドや今後の京都への車両の流入のあり方や、よりよい観光地への訪問手段を見直していかなければならないのは当然であります。
一方、喫緊の課題として、現状を改善するための交通規制のあり方から交通取り締まりまで、改善できるものも、まだまだ見受けられると思いますので、今後とも、当府警に御尽力いただきたくお願いをいたす次第でございます。
また、昼間の大渋滞に加えて、夜間の祇園地区における風俗業関係者の車両の違法駐停車問題に対しても、より積極的に取り組んでいくべき問題であると考えております。今後、早急な手当てを施さないと、ますます風紀的に見て乗り入れてほしくない車両が京都の中心地に集まってくることとなるばかりではなく、犯罪の温床ともなりかねないと強い危機感を持っております。幸い当府警にあっては、通行車両や近隣からの苦情を受けて、二条城南側の押小路通りにおいて、トラックやタクシー営業車両の違法駐車を解消するため、車両に運転手が乗車していても取り締まりを行うという強硬策を打ち出したという好事例もあることから、祇園地区においても、効果が期待できる何らかの策を打ち出す必要があると考えるところでございます。
そこで、警察本部長にお伺いいたします。東山地区の観光シーズンにおける渋滞を緩和するための交通対策及び夜間における祇園地区の違法駐車解消のための交通対策について、府警の考え方をお伺いいたします。
◯議長(近藤永太郎君) 山田知事。
〔知事山田啓二君登壇〕