◯荒巻隆三君
自由民主党の荒巻隆三でございます。通告に従い、数点にわたり質問をいたしたいと存じ上げます。
まず、エネルギー問題について、質問いたしたいと思います。
昨年3月に発生した東日本大震災から、はや1年近くが経過をいたしました。多くの尊い命が失われ、いまだ多くの方が行方不明となっておられます。改めまして、お亡くなりになられた方の御冥福をお祈りいたしますとともに、いまだ不自由な避難生活を送られている多くの被災者の皆様のためにも、被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げたいと思います。
東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故により、原子力発電施設の安全神話は完全に崩壊いたしました。電力エネルギーの半分程度を原子力に頼る関西電力管内では、昨年の夏、そしてことしの冬と、電力供給が逼迫する可能性があることから、大規模停電という危機的事態を回避するため、家庭や事業所に節電をお願いされているところであります。
こうした電力不足は、地域経済はもちろん、社会生活にも大きな影響があります。本来、エネルギー政策そのものは、国が責任を持って担うべきものでありますが、東日本大震災以降の状況を見ますと、国に任せておくのではなく、府民の生命や暮らしを守るため、また地域の省エネ産業技術などを振興するためにも、今、地方がエネルギー政策に果敢に取り組むことが必要になっているのではないでしょうか。また、地球温暖化防止の視点からも、温室効果ガスの排出をできるだけ少なくしながら、安価で安定的な電力供給の実現に向けて地域から動きをつくっていく必要があると考えます。
現在、関西電力管内の原子力発電所については、11基中10基が定期検査中でありますが、その大半が1970年から80年代半ばに建設されたもので、今後、仮に安全性が確認され、原子力発電所の稼働が再開されたとしても、その多くが近く耐用年数を超過することからも、新たなエネルギーへの転換は喫緊の課題であります。
知事は、これまでから、中長期的には省エネの取り組みとあわせ新エネルギーを創出することにより原子力発電の依存度を下げていくとの方向を示され、家庭用太陽光発電設備等の補助制度の創設など、再生可能エネルギーの普及拡大や、中小企業の省エネの取り組み支援などに鋭意取り組まれているところでありますが、短期的に見ますと、原子力発電施設の停止による電力不足を補うものとして、CO2の排出も比較的少なく、安定的に大電力を供給できるLNG(天然ガス)発電施設等の確保・増強が、府民生活や産業活動の維持のための命綱として不可欠な対策であると私は考えております。
このように東日本大震災後の厳しいエネルギーを巡る情勢を踏まえ、京都府では、平成24年度当初予算案に「京都エコ・エネルギー戦略推進費」を計上され、府民生活や産業活動を守り発展させていくため、京都エコ・エネルギー戦略推進会議を設置し、環境イコールエコを重視した地域エネルギー戦略を推進することとされており、私は、この予算を高く評価するものであります。
そこで、知事にお伺いいたします。京都府として、地域におけるエネルギー政策を今後どのように進めていこうとされているのでしょうか、関西広域連合での取り組みもあわせて御所見をお聞かせ願います。
次に、商店街の活性化について質問いたします。
日本の経済情勢は、経済成長率がマイナス0.4%と2年ぶりにマイナス成長となり、景気回復がおくれるとの見通しや、貿易収支が31年ぶりに赤字となるなど厳しい状況にあります。京都府の状況を見ましても、先月発表された昨年10月から12月の京都経済情勢報告では、今なお進行がとまらない円高の影響などで、生産活動が減少し、今年度の企業収益が減少する見通しとなり、従来の「緩やかな持ち直しの動き」から「足踏み状態」へと、景気判断が1年ぶりに下方修正されるなど、景気の先行きが懸念されております。
こうした景気の影響は、以前から厳しい商況と言われ続けている商店街にも当然ながら押し寄せており、長引くデフレによる物価の下落や買い控え、さらには、京都にとって集客の基幹とも言える観光に関しても、外国人観光客の激減による消費の低迷などで、京都の商店街を取り巻く販売環境は、より厳しい状況に置かれております。
また、あわせて、商品を買っていただく消費者人口にも不安を抱えております。例えば京都市の東山区を例にとりますと、平成7年の国勢調査では4万8,241人であった人口が、平成22年には4万526人と、この15年間で約7,700人も減少しました。そして、今では65歳以上の高齢者が全体の3割を超え、京都市内で最も高い高齢化率となっております。
こうした少子・高齢化や人口減少による影響は、祇園かいわいや清水寺周辺などの、いわゆる観光地集積型の商店街であれば、まだ人通りも多くにぎわいもございますが、昔ながらの地域密着型の商店街、例えば祇園エリアから北東に位置する古川町商店街などでは、高齢化と人口減少で、そこで買い物をするお客さんそのものが減少してきているのであります。このような状況は、決して東山区に限った現象ではなく、ほかの地域の商店街においても同様の課題ではないかと思っており、買い物客の減少や店舗の後継ぎ不在の問題で閉店や廃業に追い込まれてシャッター通り化するなど、商店街が衰退していくことを非常に懸念しております。
かねてから私は、商店街というところは、単に物を売り買いする商いの場としてだけではなく、今も昔も人々が自然と集まり、地域課題のことや身近なことなど、いろいろなお話をしながら情報を交換し、買い物支援等課題を解決し、つながりを深めるといった地域コミュニティの核としての役割も果たしているところであり、心温まるといった、地域の方たちにとって安心できる場所、その地域のシンボルとしての役割を果たしていくところではないかと思っております。そうした意味からも、私は、商店街は失ってはならない大切な場所であると考えておりまして、昨年の震災以降、盛んに「きずな」ということが言われておりますが、商店街はまさに地域のきずなをつなぐ場であり、地域コミュニティの形成において不可欠な場所であります。
こうした中、京都府では、今年度から「一商一特推進事業」を創設され、商店街の目玉づくり、特色づくりに積極的に取り組まれているところであります。私は、商店街が今後とも存続し活性化していく方法として、そこにしかない特色をつくっていくということは非常に重要であり、こうした取り組みを高く評価するとともに、今後の展開に大いに期待するものであります。
そこで、知事にお伺いいたします。地域にある一つ一つの商店街の特色を引き出し、そして発展させていく、この一商一特推進事業のこれまでの成果と今後の展開について、知事の御所見をお聞かせ願います。
次に、堀川団地の再生について質問をいたします。
堀川団地は、現在、京都府住宅供給公社が所有・管理する住宅でありますが、戦後の昭和25年から28年にかけて整備されたもので、その当時は、全国初の鉄筋コンクリートづくりの店舗併用型の住宅として注目を浴び、市街地復興住宅のモデルとなったと言われております。それ以来、堀川団地は京都市の中心にあって、勤労者のための貴重な公的住宅として、また周辺住民の生活を支える貴重な商店街として、大きな役割を果たしてきました。しかしながら、建設後60年以上が経過し、建物の老朽化が目立つようになり空き店舗もふえ、また、平成15年に京都府住宅供給公社により実施された耐震調査では、耐震改修などの対策をとることが必要であることも明確になったと伺っております。
そのため、京都府では、賃貸住宅と店舗の単なる建てかえではなく、地域のニーズをとらえ堀川団地を中心としたまちづくりの観点からの検討を行う必要があると考え、専門家で構成する「堀川団地まちづくり懇話会」を平成21年4月に設置し、堀川団地の再生に向けて商店街の存続のあり方や観光資源の活用を含めて活発な意見交換が行われ、平成21年9月に懇話会の提言が取りまとめられたところであります。その提言では、入居者、商業者、地域住民、行政などの関係者が、協働して新しいまちづくりに取り組み、再生のビジョンや整備方法を協議、共有しながら進めていくこととされたところであり、こうしたさまざまな関係者の合意形成を図りながら、まちづくりのあり方を描いていくという新しい取り組みを大いに評価し、今後の展開に期待するものであります。
昨年8月には、入居者や商店主、さまざまな地域団体、京都府、住宅供給公社から成る「堀川団地まちづくり協議会」を発足させ、ワークショップも開催しながら、まちづくりのビジョンや整備方法について議論を重ねてこられているとお聞きしております。先ほどの提言にも述べられていますが、高齢者世代や子育て世代が安心して住み続け、活気あるコミュニティが生まれるまちづくりを実現していくためには、京都府としても積極的に関与し、堀川団地の再生に向けて取り組んでいくべきと考えます。
こうした議論や経過を踏まえ、京都府におかれては、今回提案された当初予算案に、新堀川京極再生事業費1,800万円を計上し、建設実施に向けた具体的なプランを調査・検討し、民間事業者による事業コンペを実施することとされています。これで、長年の課題であった老朽化した団地の耐震化だけでなく、地元商店街の活性化に向けてようやく動き出したものと大いに期待をしております。
そこで、知事にお伺いいたします。堀川団地の再生整備に当たっては、堀川団地まちづくり懇話会の提言や堀川団地まちづくり協議会での議論を十分に踏まえながら、伝統文化や学生のまちとして地元商店街とも連携した京都らしいにぎわいのある地域となるよう整備されることが必要であると考えますが、今後、どのようなスケジュールで整備される予定なのでしょうか。また、具体的にどのような整備内容となるのでしょうか。もちろん、事業コンペで具体的な提案をしていただくことになると思いますが、知事としてはどのようなイメージをお持ちであるのか、お聞きいたしたいと思います。
分割いたします。
◯議長(近藤永太郎君)
山田知事。
〔知事山田啓二君登壇〕
◯知事
(山田啓二君)
荒巻議員の御質問にお答えいたします。
まずエネルギー問題についてでありますが、東日本大震災に伴う原発の事故を受け、現在、国においてエネルギー基本計画の見直しが進められておりますけれども、脱原発依存の大きな流れの中で、府民の生活を守り、産業・雇用の発展を維持するためには、エネルギーの安定的な確保について、当面の対策と中長期的な対応策の両面から積極的な対策を講じる必要があります。
このため、まず当面の対策としては、原子力発電所の運転停止に伴う夏期・冬期の電力需要の逼迫に対応することが必要であり、京都府では、関西広域連合と連携して省エネ・節電対策を推進するとともに、中小企業等の省エネ設備助成、省エネアドバイザー派遣など、省エネ型社会の推進に努めているところであります。さらに、既存施設の活用の観点から、関西電力に対して、現在休止中の宮津エネルギー研究所の運転再開も求めているところであります。
中長期的には、これからの時代を見通し、創エネ・新エネ施策を推進する必要がありますので、私どもは今回の予算におきましても、学研都市におけるメガソーラー発電事業の推進調査や、スマートグリッドによるエネルギー未来都市づくりについて、また、京都産業エコ推進機構によるグリーンカンパニー、省エネとかそういったものを進めていく事業体ですね、こちらの育成、さらには、京都大学等と連携した、例えば海藻を活用したバイオ燃料の開発事業など、地域の資源活用を進めることにより、単なるエネルギーの確保ではなくて、新たな再生エネルギーの可能性の調査と都市開発、まちづくりというものを一体的に進めていきたいというふうに考えているところであります。
また、既存の電力エネルギー源の増強による供給力の安定確保も大切であり、このため、発電効率が高く環境の負荷が少ない天然ガス発電施設、多分、非常に港との関連が重要になってまいりますので、そうした点についても、機能の面、さらには立地可能性の面、こうした点について調査を実施していきたいというふうに思っております。
このように、創エネ、省エネ、そして既存エネルギーの供給力増強の3つの柱を京都エコ・エネルギー戦略としてオール京都体制で総合的に推進するため、今議会に必要な予算をお願いしているところであります。
また、現在、関西広域連合エネルギー検討会においても、関西全体のエネルギーの需給見通しやエネルギー源の分散・多様化のあり方について検討しておりまして、正直言いまして京都だけではエネルギーを賄い切れるものではございませんので、こうした関西広域連合との連携のもとに、今後とも、安心・安全で、環境性や経済性にすぐれたエネルギーの確保に取り組むことにより、地域の活性化と地球温暖化対策を一体的に進め、持続可能な社会を実現してまいりたいと考えております。
次に、商店街の活性化についてでありますが、御指摘のとおり、消費の落ち込みや近隣の商業施設との競合、商店主の高齢化や後継者不足など、商店街を取り巻く環境は大変厳しいものがあります。しかし、商店街という組織は、なかなかほかには見られない、ある面ではやっぱり日本の文化的なと申しますか、きずなというものを大切にした地域社会の特徴じゃないかなというふうに思っております。ほかのところに行きますと、何々通りにこういう店があるというのはよくあるんですけれども、ここまで商店街として、一つのコミュニティの中心として、お互いに連携し合いながらアメニティーの向上を目指していくというのは、やっぱり日本独特だというふうに思っておりまして、こうしたものが実は一番効果的に動くのは高齢化社会ではないかなと私も思っております。10年後には65歳以上は3割になると思いますけれども、歩いて行けるところにあって、しかも対面販売を通じて、お互いの様子というものを確認し合い、きずなを確認し合いながらやっていくという商店街の役割というのは、これから本当に重要になるんじゃないかなというふうに考えております。
それだけに、商店街の活性化が重要でありますけれども、そのためには、1つには、やはり競争力をつけていかなければならない。つまり、それぞれの商店街が持つ強みや特徴を生かして、しっかりとにぎわいの基盤をつくっていくこと。もう1つは、やはりニーズに合わせた形で展開を図っていかなければならない。例えば、子育て世代や高齢者などの地域の方々については、今まで以上に配達とかそうしたものも含めた形で応じることによって、コミュニティの中核としての役割を果たすこと。この両面から取り組みを進めることが、私は必要であるというふうに考えております。
このため、これまで進めてきた集客事業や施設整備の支援、「きょうと元気な地域づくり応援ファンド」の活用等に加えまして、その商店街ならではの特徴を生かした、特徴を伸ばしていく取り組みを進めるということで一商一特事業を実施したところであります。これにより、例えばにぎわいづくりでは、激辛をコンセプトにした取り組みで激辛グルメの全国大会を開催されるとか、映画や妖怪という地域資源を生かした観光客の増加という形で商店街の活性化を図るところとか、議員御地元の東山区でも、観光と連動し、空き店舗を利用した町家の貸し出し政策をとられているところがありますので、こうしたものを応援していきたいと思います。コミュニティづくりの面では、空き店舗を利用した子どもの見守りですとか、子育て中の親世代の交流やふれあいの場の提供ですとか、高齢者の健康づくり、こういったものについて商店街を舞台に活動を行っていくときに支援をしていくような形で、世代を超えた新たな交流が生まれるなどの成果も出てきているところであります。
こうした中で、平成24年度は買い物サポートなどのコミュニティの増進にもつながる事業を加えるほかに、一商一特事業をさらにパワーアップさせることとして、必要な予算を今議会にお願いしております。それは、今年度は新しい試みとして、何とかしたいという強い意欲を持ちながらもなかなか打開できないでいる、特に厳しい状況にある商店街につきましては、府の職員や専門家、商店街応援隊など多様な人材が手を携えて、3年程度をかけて集中的な支援を行って、何とかコミュニティやにぎわいの回復を目指すという、「命の里」がありましたけれども、それの商店街版と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけども、そうした感じのものをやっていきたいなというふうに考えております。
さらに、ソーシャル・ビジネスセンター(仮称)を府庁に設置いたしまして、地域に根差したビジネスの育成ということも、商店街における新しい事業展開の一つとして支援するなど、商店街の活性化に向け、引き続き全力で支援をしてまいりたいと考えております。
次に、堀川団地の再生についてでありますけれども、堀川団地を中心とする地域は、南には新設される京都水族館や西本願寺、さらには二条城と続き、北には西陣織会館とか茶道資料館というものがありまして、これは寺社も多く、京都のにぎわいの交流の西の軸というものを形成できる大変重要な地域であるというふうに考えております。
堀川商店街は、京の七夕事業でも大きな役割を果たしておりますけれども、老朽化が著しく、その再開発は本当に大きな課題であるだけに、まちづくりとして意義のある事業として、先日の門川市長との会談の中でも、府市連携で進めていくことを確認したところであります。
再生に取り組むに当たりましては、平成22年に「堀川団地まちづくり協議会」を立ち上げ、団地入居者はもとより、地域住民や福祉団体、京都市等が参画して、再生の具体化に向けて議論を重ねて、整備内容が次第に固まってきております。具体的整備につきましては、現入居者や店舗の移転先を確保しながら、これは新しい施設をつくりながら順次また改修していくという形をとりたいというふうに思っておりまして、まず南北両端の2棟から始めていくのが一番合理的かなという形の提案をいただいております。そして、その施設内容としましては、民間商業施設ですとか、高齢者向け住宅と福祉施設の一体整備とか、そういうものを民間事業者の創意工夫をコンペ形式により競ってもらいたいというふうに考えております。その上で、残りの4棟につきましても、耐震改修等を行いながら、南北2棟の状況を踏まえて建てかえをしていくのが今のところ最善ではないかなというふうに考えております。この場合、細長い敷地形状や西陣地域の町並みにも配慮しながら、団地全体と申しますか、地域全体に統一性を与えるような市街地景観の創出を目指すとともに、その上で魅力的な歩行者空間の整備を京都市と連携をして行ってまいりたいというふうに考えております。
4月から、2棟につきましては、民間事業者などに参加していただくための収支見通しなどの事業を着実に進めるための事業スキーム等の調査・検討を実施することとしておりまして、そのために必要な予算を今回お願いをしているところであります。
今後とも、団地再生がまちづくりとしてのモデルケースとなるように、地域団体や京都市とも連携して、地域ぐるみの取り組みとなるように全力を挙げてまいりたいと考えております。
◯議長(近藤永太郎君)
荒巻隆三君。
〔荒巻隆三君登壇〕
◯荒巻隆三君
御答弁ありがとうございました。エネルギー問題についてですけど、原子力については、現在、国民的議論の渦中にあって、原子力の未来を決めようとする国の原発政策についての結論は先送りされる中にあっても、本府においては、地域エネルギー戦略をさらに率先推進していっていただきたいと思っております。私も、3年前の2009年6月定例会において代表質問で触れさせていただいておりましたが、遠くない将来、原子力で電力量を賄わなくてもいい社会の実現に向けて、知事に尽力を願う次第であります。
また、商店街の活性化、堀川団地の再生についてもそうですけど、それぞれの町並みや個性ならではを強みとして生かそうとする商店街が、地域に対し求心力を取り戻し、より有効に経済的にもにぎわいを高めていけるよう施策推進をお願いしておきます。
次に、地域農業と農山村の振興について質問いたします。
京都府の農業は、中山間地域が7割を占め、小規模零細農家が多く、国が進めるような規模の大きな農業経営体が大宗を占める構造を目指すのは難しい状況にあると認識をしております。
これまで、京都府においては、京野菜など、規模は小さくても京都ならではの収益性の高い作物の生産振興を進めてこられ、ブランド化の取り組みも相まって、全国的にも京野菜の知名度が向上するなど、その産地づくりが京都府農業を牽引し、農業者の所得向上につながってきたものと考えております。
また、法人化や農商工連携、六次産業化などの農業ビジネスの取り組みを支援されたことにより、安定した継続性のある農業経営体が育成され、地域農業の核となっていると伺っております。さらに、これまで育成を進めてこられた集落営農組織の中には、法人化をして地域の農業をしっかりと守っていこうと頑張っておられるところがあるという話も伺っており、こうした取り組みの成果が今後の京都府農業を考える上での手がかりになると考えております。
こういった取り組みが進んでいる一方で、農林業センサスによれば、農業生産を担う府内の農業就業人口については、平成17年からの5年間で3万9,000人から2万9,000人と25%も減少する事態となっており、その平均年齢も64.5歳から68.3歳と、全国平均である65.8歳を上回る高齢化が進行している状況にあります。
さらに、昨年来、話題となっているTPP交渉への参加問題があります。決して競争力が強いとは言えない我が国の農産物の現状を見るにつけ、米を初めとして価格競争に巻き込まれようものなら、産業としての農業が成り立たなくなり、農村地域を維持していくこと自体が難しくなるのではないかと考えます。
そもそも農村社会は、共同で行う農作業や農業用水の利用などを中心に、家と家が地縁的に結びついた集落を基礎として形成・維持されてきており、さらに、人と人とのしっかりとしたきずなで地域社会が営まれてきました。しかしながら、都会への人口流出や他の産業への若者の就業などにより、農業や農村の活力の低下と地域経済の後退、公共サービスの撤退などが表面化する中で、生活し続けることが困難で集落の存続すら危ぶまれる地域も出始めており、加えて、都市近郊の地域においても宅地化が進み、集落としての機能の減退を初め地域コミュニティや農村としての協働力の低下を招くなど、懸念する事態となっているところであります。
そうした中、本府においては、市町村と連携しながら、地域に暮らす皆様が、暮らしやすく魅力的な地域にしようと自主的に取り組まれる活動に支援する地域力再生プロジェクト事業を初め、特に過疎化・高齢化が進んでいる農山村地域においては、全国で初めて府の職員を「里の仕事人」として現地へ配置し、住民の皆さんとともに地域の課題解決に取り組む「共に育む『命の里』事業」など、京都独自の地域再生活動に先進的に取り組まれており、大変期待をしているところであります。
そこで、知事にお伺いいたします。市場開放に向けた動きなど経済のグローバル化が進む中、将来にわたって京都府の農業と多様で豊かな農山村を維持し発展させていくためには、京都の強みを生かした農業を戦略的に展開していくことが必要と考えますが、地域の農地を守り、競争力のある地域農業を育てていくために今後どのように農業施策を展開されるのか、知事のお考えをお聞かせ願います。
また、農山村集落の存続が危惧される中にあって、住民一人一人が輝き、若者からお年寄りまでが誇りと生きがいを持って豊かに安心して暮らすことができる農村社会を築くことが必要と考えますが、知事はどのような対策を講じ、農山村を維持し、活性化を進めようとされておられるのか、御所見をお聞かせ願います。
次に、世界遺産登録の推進について質問いたします。
現在は、世界遺産の時代と言っても過言ではないほど、日々、世界遺産の言葉をテレビで見聞きしたり、書籍から触れたりする機会がふえてまいりました。通常、我々が世界遺産と呼んでいるものは、ユネスコの1972年総会で採択された世界遺産条約に基づくもので、顕著で普遍的な価値を有する遺跡や自然地域などを人類全体のための世界の遺産として保護・保存することを目的に登録されたもので、建築物や遺跡などを登録する文化遺産、地形や生物などを持つ地域を登録する自然遺産、文化との両方について価値を持つ複合遺産の3つに大別されます。
2011年7月現在で、世界全体において936件が、国内では16件が登録されています。国内の16件の中には、清水寺や上賀茂神社といった、京都・滋賀にある17の社寺とお城が、古都京都の文化財として登録されております。皆さんも御存じのとおり、この世界遺産の登録に当たっては、世界的にも顕著な普遍的価値の証明が必要であることから、登録までには非常に高いハードルがあり、日本国内の暫定リストに入るのもなかなか難しい状況にあります。
また、その他の遺産の一つとして、2006年にユネスコが創設されました無形文化遺産があります。世界遺産が不動産を対象としているのに対し、こちらは人類が持つ知恵や習慣が対象であり、人々の慣習・描写・表現・知識・技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間を対象としています。こちらは2011年11月現在で、世界全体において259件が、国内では20件が登録されています。国内の20件の中には「京都祇園祭の山鉾行事」や「能楽」等が登録されております。こちらも、登録に当たっては人類にとって重要であることの証明が必要とされております。
こうした状況の中、京都府では、さらなる世界遺産並びに無形文化遺産の登録を目指し、世界文化遺産に「天橋立」と「宇治茶」、無形文化遺産に「日本料理」の登録に向けた取り組みを推進しているところであります。
京都は、日本の文化・伝統の中心地であり、日本を代表する文化財の宝庫であるとともに、北部から南部まで文化に裏打ちされたすばらしい景観があります。また、京料理は、こうした京都の生活文化の根幹であり、日本料理の頂点に存在するものであると考えており、未来に向かって日本料理を保存・継承するためには、人材育成・研究のための組織が必要であると考えております。そうしたことからも、京都府が天橋立、宇治茶、日本料理の世界遺産等の登録に向けた取り組みを地元市町村や関係団体等と協働して進めていることは、文化の保護・育成は京都府の担うべき責務の一つであると考えている私にとって大変喜ばしく、今後とも積極的な取り組みをお願いいたしたいと考えているところであります。
さて、ことしは世界遺産条約が採択されてから40周年に当たり、世界遺産を改めて振り返り、世界遺産条約の将来を考える節目の年であると伺っております。1月には、パリのユネスコ本部で開幕行事が開催され、それを皮切りとして世界各地で記念行事が行われ、その最終会合が、ことし11月に京都で開催されることが決定したと伺っております。この会議の京都への誘致については、世界遺産・無形文化遺産といった有形・無形の遺産を有する京都でぜひ開催したいと、知事と京都市長が府市懇談会で共同誘致を確認し、府市協働で取り組みを進め、誘致に至ったと伺っております。世界遺産の登録に向けた知事の並々ならぬ決意によるものと、心から敬意を表する次第であります。
そこで、知事にお伺いいたします。京都府が天橋立、宇治茶、日本料理の登録に向けた取り組みを推進する意義を改めてお聞きいたします。また、現在までの取り組み状況と今後の取り組み方向、そして世界遺産登録に至る可能性について、知事の思いをお聞かせいただきたいと思います。
そしてまた、40周年事業として京都で行われます世界遺産会議が、京都の府民にとってメリットがあるものとして運営・展開されることを望んでおりますが、その展開内容についてもお聞かせ願いたいと思います。
◯議長(近藤永太郎君)
山田知事。
〔知事山田啓二君登壇〕
◯知事(山田啓二君)
地域農業と農山村の振興についてでありますけれども、京都府におきましては、京野菜を初めとする付加価値の高い農業生産を推進し、この20年間で農業産出額の維持率が、みんな下がっているものですから余り前向きな数値ではないんですけれども、全国3位という高い水準になっているところでございます。しかし、もともと中山間地域が多く、農業者の大幅な減少とその高齢化の進展、核となる担い手のいない集落が全体の半数弱を占めるなど、今後の農業生産や農山村の維持・存続が懸念される状況にありますことから、私どもといたしましては、1つには農業で暮らせるような経営力の強化、もう1つは過疎・高齢化の進む集落の維持のための多様な対策、この両面から施策を進める必要があると考えております。
このため、まず農業の経営力の強化につきましては、全国レベルで競争力のある京野菜や、特Aに無事返り咲きました丹後コシヒカリなど、京都の特徴を生かしたブランド力の強化対策、また、核となる集落が農地を集積し、経営の多角化で担い手の希薄な集落を牽引する「京力(きょうりょく)農場づくり」による経営力の強化対策を推進していきたいと考えております。
この京力農場づくりでは、同時に、担い手養成実践農場や新規就農者等への支援給付金で担い手を確保して、核となる経営体の基盤の強化を図っていきたいと思いますし、食品関連産業の参入を促進して、地域農業者と契約栽培等を通じた生産量のアップなど、多角的な観点から農業を応援していきたいと考えております。
また、農村集落の維持対策といたしましては、人と資源を最大限に活用した地域オリジナルの「一村一業活動」を展開する「京都村」として特色ある村づくりを進める中で、新たな集落の活力を生み出していきたいと考えております。例えば、農家民宿の開業を重点的に取り組みます民宿村ですとか、地元食材にこだわる農村レストラン、グルメ村とか、農家が点在しつつある都市部で、体験農園と直売所を拠点とした近隣住民との新たなコミュニティづくりに取り組む体験農園村とか、こういうさまざまな京都村をつくりまして、これに対しまして、計画づくりから実践まで、京都村支援員による伴走支援を実施していきたいと考えております。
さらに、「命の里」新展開事業として、外部の知恵や力を活用し再生活動をパワーアップさせるために、里の仕事人・仕掛人による支援を最大2年間延長いたします。それから、大学生の長期滞在による文化・芸術の創作・交流活動を行うアートキャンプの実施ですとか、民間資金を活用した地域再生活動の自立促進に加えまして、私も先日、大雪に見舞われました綾部の古屋地区を訪れたんですけれども、高齢者の安心・安全な生活を支えていく見守り活動を本格的に実施していきたいというふうに思っておりまして、こういう地域の実態に応じたきめ細かい対策を集落維持対策として充実させていきたいというふうに思っております。
こうした両者の取り組みを通じて、中山間地域のみならず、広く府内の農村が力強い農業対策と同時に持続可能な集落対策を進められるように、全力を挙げてまいりたいと考えております。
次に、世界遺産の登録推進についてでありますけれども、京都は17の世界文化遺産が登録されている世界有数の地域でありまして、世界遺産登録を推進することは、まず日本文化と日本文化に占める京都の重要性を私たち自身が改めてしっかりと認識をして、それを京都に生きることの誇りと自信につなげていくということが大きいと思います。2点目としましては、登録によりまして、そうした京都の文化の保護・保存体制をしっかりとつくり上げていくということ。そして3番目といたしましては、登録により、この文化的価値が世界に発信され、京都のブラント力がより一層強化されて、観光産業等への高い経済効果も見込まれるという点にあるというふうに思っております。
建築物や遺跡等が対象の世界文化遺産への登録を目指しておりますのは、まず私どもでは天橋立が既に動いておりますけれども、これは日本を代表する景観というだけではなくて、和歌や絵画など歴史的・文化的にも非常に重要な資産でありまして、暫定登録一歩手前までの評価を得ており、今年度末をめどに有識者による価値の再検証を行い、文化庁に再度提案を行う予定にしております。宇治茶につきましては、生産、流通、そして喫茶文化を全体としてとらえていくことによって、本当に日本ならではの、宇治茶ならではの比類なき価値というものをしっかりと確立していきたいというふうに考えておりまして、有識者による可能性検討委員会で今年度末をめどに検討を進めておりまして、その後の文化庁への提案に持っていきたいというふうに考えております。
一方、人類の知恵や習慣が対象になっております世界無形文化遺産に係る日本料理でありますけれども、こちらは日本料理というものが世界じゅうに広まっていく中で、さまざまな日本料理と称するものが随分出てきておりまして、これは外国へ行くと日本料理と思って入ったらえらいものだったりする場合もあるわけです。今この時期において、やっぱり日本料理というものの本質を明らかにし、しっかりとそのあり方とか継承というものの体制をつくっていきたいということで、関係団体とともに提案書を取りまとめまして、昨年9月に農林水産省の検討会にそれを出させていただきました。文化庁の審議も進み、3月にもユネスコに申請の方向と聞いておりまして、こちらのほうはかなり順調に今、来ているところであります。
こうした取り組みを進める中、本年11月に京都での開催が決定いたしました世界遺産条約採択40周年記念最終会合が、10年ごとの節目の会議で世界各国で開催される記念会合の最終を飾る重要な会議として開催をされるわけでありまして、世界遺産の専門家や政府関係者、世界のマスコミなど約600名の方々が京都に参集する予定であります。
私どもは、この会議を、世界遺産の地・京都ということを、日本に、また世界に発信できる絶好の機会としてとらえ、京都市を初め地元市町村や関係団体と協力し、日本料理を中心に京都文化を体験できる博覧会などを開催し、府民対象のシンポジウムや参加者の京都文化体験等を実施してまいりたいと考えております。さらに会議の前後には、国内外の専門家の皆さんにも、できましたら天橋立や茶文化を視察いただいて、国際的な評価というものをしっかりとつくり上げて、開催機運を盛り上げてまいりたいと思っております。
世界文化遺産も世界無形文化遺産の登録につきましても、だんだん多くなってくるにしたがいまして非常に厳しくなってまいりました。踏むべき段階が多く、また、いろいろな面で評価においての課題もたくさん出てきております。そうした面では、決して平たんな道とは言えませんし、特に世界遺産では時間がかかると思いますけれども、こうした取り組みを息長くしっかりと地域全体でつくり上げていくことによりまして、地域自身の目指す方向性とこれからの未来というものが共有できるということを確認していくことが、本当の意味ではやっぱり大きなメリットじゃないかなと私は思っておりますので、これからもこうした登録活動について、しっかりと進めてまいりたいと考えております。
◯議長(近藤永太郎君)
荒巻隆三君。
〔荒巻隆三君登壇〕
◯荒巻隆三君
御答弁賜りまして、ありがとうございました。本当に農山村は、我々府民にとっての財産であり、ふるさとであります。また、維持・発展、そして再生に向けて、本府挙げての、また、制度、人材フル稼働で、ぜひとも施策推進をお願いいたしたいと思います。
世界遺産の登録についての推進も、ぜひ引き続きお願いいたしたいのですが、とりわけ無形文化遺産、日本料理について言及をさせていただきたいと思います。言うまでもなく、日本料理は、日本人の美意識の凝縮された、まさに日本の悠久の歴史とともにはぐくまれてきました芸術だと思っております。このことは、本当に普遍的に全人類に対して価値のあることだと思っておりますので、ぜひとも世界に対して、日本料理の確固たる地位を築いていっていただきたいと思っております。そのことが、日本料理の頂点であります、我々の誇りである京の料理人の悲願であり、そしてまた京の料理人に対する励みとなることを信じておりますので、心よりの御奮迅を知事にお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
────────────────────