平成24年9月定例会 (第6号) 一般質問

◯議長(近藤永太郎君)
日程に入ります。日程第1、一般質問を行います。
まず、荒巻隆三君に発言を許します。荒巻隆三君。
〔荒巻隆三君登壇〕(拍手)

◯荒巻隆三君
自由民主党議員団の荒巻隆三でございます。通告に従い、数点にわたり質問いたしたいと存じ上げます。
まず初めに、文化財防災対策についてお伺いいたします。
8月13日から18日にかけて断続的に府南部地域を襲った記録的な豪雨によって、家屋や道路、河川、学校や福祉施設、農地など、府民生活に甚大なる被害が広範囲にわたり生じました。私たちは被災された方の生活再建に向けて全力で取り組む必要があります。また、このほか文化財への被害も相次ぎました。世界文化遺産に登録され、鳳凰堂を初め多くの国宝を擁する平等院では、庭園の土砂崩れによって鐘楼の基礎が露出するなど建造物への被害も心配されました。重要文化財である建造物が多数存在する萬福寺では、山からの雨水が流入し境内各所で被害が生じました。皇室の祖神を祀ることから伊勢神宮に継ぐ天下第二の宗廟であった石清水八幡宮では、本殿に至る参道が複数箇所にわたって土砂崩れを起こし、ケーブルカーも被害を受けたこともあり、参拝が困難になったと伺っております。その他、各地で重要文化財、史跡名勝、府指定文化財等が被害を受けたとのことであります。
今は、秋の長雨の季節に入っています。被災した文化財について応急措置は講じていただいていると確認しておりますが、今後の降雨によりさらに被害を受けないようにしっかりとした復旧工事が必要であります。また、これから秋の観光シーズンを迎えますが、訪れる観光客の方に安全で快適に参拝していただくために、早急な復旧が望まれます。
今回の補正予算で文化財災害復旧の補助金が可決されました。国の災害復旧事業の対象にもなるとのことですが、これらの経済的な支援に加え、技術的なサポートなど、確実、早急な復旧に向けて、しっかりとした支援をお願いいたしたいと思っております。
そこで、お伺いいたします。京都府南部豪雨により被害を受けた文化財の復旧状況や今後の見込みはどうなっているでしょうか。
今次の災害では、幸いにも文化財そのものの流失や水没といった事態には至りませんでした。しかし、最近の異常とも言える気象状態から見ても、今後、文化財が大規模な水害に見舞われることも想定しておかなければなりません。文化財の防災対策としては、これまでは文化財が損なわれる主な原因の中で、最も脅威となるのは焼失、すなわち火災であると言えました。文化財保護の基本は、出火防止に重点を置いて、防火や耐震、防犯などさまざまに対策を講じていただいてきておりますが、今後はこれまでに経験のないような豪雨や台風などの風水害に対する備えが必要と思いますが、どのように考えておられるのでしょうか。
京都には17件の世界文化遺産や2,000件を超える国宝や重要文化財などの貴重な文化財が存在しており、私たちは世界でも類いまれなる地域に暮らしております。これら文化財の歴史上、学術上、芸術上の価値、また、その観光資源としての価値、歴史や文化を学ぶための教育資源としての価値ははかり知れないものがあります。何より長く都であった京都の文化財は、訪れた人が日本の歴史を追体験し、伝統や文化のルーツをたどることのできる、まさに国民的な財産だと言えます。私たちは、これら貴重な文化財を日常生活の中で身近に感じ、まるで博物館の中で暮らすような幸運に恵まれております。しかし、これはかけがえのない財産を次の世代に守り伝えていくという重大な責務を負うことと表裏一体の関係になっていると言えると思います。
このように、京都は文化財が高密度で存在するという地域の特性ゆえに、一旦広域的な災害に見舞われると被害は甚大なものとなります。また、文化財は市街地と隣接していることが多く、効果的に防災対策を講じるには地域と一体となった取り組みが必要であります。
そのためには、文化財防災は所有者や行政だけが担うのではなく、国民的財産として府民や地域が一緒になって守っていくといった意識を高めていくとともに、平時から、所有者と消防、警察、文化財保護担当課といった関係機関、文化財市民レスキュー等の地域住民が情報を共有し、連携・協働体制を構築しておくことが重要であると考えます。文化財の関係者と地域住民の方々とが相互に協力して文化財を守る体制をさらにレベルアップし、水害においても初動活動の困難性を補うために、地域住民等による協力が必要と認められるものを選び出し、日常における住民や観光客の安心・安全とともに文化財防災の重要性についても、府民に啓発し、文化財保護対処の知識も含めた具体的な役割を定め、体制の整備を図るべきものと考えておりますが、これらの点も踏まえて、今後の文化財防災対策についてどのように進めていこうとされているのか、御所見をお伺いします。
次に、文化度を基調とした観光誘客についてお尋ねします。
今日、私たちを取り巻く社会は、経済、文化、環境など、あらゆる面でグローバル化が進展しております。このようなグローバル化は、国レベルだけではなく、地方にとっても大きな影響があり、対応を迫られているところであります。京都府においても、中小企業が東アジアを初めとする海外にビジネス展開する場合のさまざまな支援や、海外に目を向けた積極的な施策を展開してこられたところですが、私は中でも、観光の分野におけるグローバル化への対応が非常に重要であると考えているところであります。
御承知のとおり、観光産業は裾野が広く、旅行業、宿泊業、運輸業のみならず、飲食業、お土産物の販売を含む小売業、広告業、さらには農林水産業、製造業、建設業まで、あらゆる産業に関係する総合産業であり、とりわけ京都においては、和装産業や伝統工芸、さらに京料理など、地元産業に及ぼす効果も大きなものがあると思います。外国の方が日本文化のすばらしさに触れ、その意欲的な観光需要により発生する経済効果は、厳しい経済情勢においても堅調であり、とりわけ成長するアジアを背景に、訪日外国人旅行者を増大させることは、京都経済の活性化につながるものであります。
さらに、京都は1200年を超える歴史に培われた豊かな歴史・文化や、多くの世界遺産など、いわゆる文化力を有しています。この魅力をより深く理解し、日本人の美意識や精神を理解してもらえる方々にとっては、これがブランドとして大きな力を持つとともに、海外でのセールス活動を行うに当たっては、ほかの地域に比べて大きなアドバンテージを持っていると思います。このブランド力を生かし、これまで京都府では外国からの訪日観光、すなわちインバウンド観光の取り組みとして、海外メディアを招聘しての地域の魅力を世界に発信するファムトリップや香港観光プロモーションにおける京都物産展の開催など海外戦略を図られてきたところであり、山田知事みずからが先頭に立ち、みずから海外に赴いてPR活動を行うトップセールスに力を注がれています。また、一昨年の関西広域連合の設立並びに広域観光・文化振興担当委員への就任により、広域連合の活動の一環としても積極的に取り組みを進めておられます。
昨年7月には、関西広域連合として初めて、中国・北京市及び上海市においてトッププロモーションが実施され、その後、昨年9月及び本年8月には韓国・ソウルにおいて、さらには今月11日からは中国トッププロモーションが実施されたところであります。またその際、あわせて京都舞鶴港国際フェリートライアルや香港プロモーションなどの京都府としての独自セールスにも力を注がれているところであります。折しも日中関係が非常に難しい中、先日の訪中には御苦労もあったかと思いますが、この観光分野の海外トップセールスの取り組みについてお尋ねします。
まず、知事みずからが先頭に立って観光トップセールスを行うことに、どのような意義があると考えておられるのでしょうか。また、この間のトップセールスは、どのような成果があったとお考えでしょうか。
そしてまた、多様な国民性を持つさまざまな国の人々を対象に観光誘客を働きかける難しさでもありますが、より戦略的な海外誘客を図るのであれば、いま一度、売り手と買い手のミスマッチと申しますか、我々京都側の見せたいものと観光客の見たいもののミスマッチを解消していかなくてはならないと思っております。一例ではありますが、中国圏の方々に桂離宮を見せても、掘っ立て小屋にしか見えないという評価もある一方、ヨーロッパ圏の方々には建築空間の美意識の極みであるという表現をなされるように、評価や価値観の差異が観る側にとって大きく変わるという検証がなされております。広いアジアを見渡してみても、京都の文化に対してきらびやかなものに大変造詣の深い中国圏の方々がおられる一方、わびさびに関心を寄せる東南アジアの方々もいらっしゃいます。一概的な京都のイメージをさらに細分化することにより、相手に合わせてアピールする工夫で、よりよい誘客の効果が上がるのではないかと思います。
まだまだ世界の中では、日本、そして京都がどういう価値を持った都市であるのか、誤認も含め不明瞭であって、今後我々はしっかり細かく伝える責任と役割があり、京都の文化の持つ受け手ごとに発揮できる多様な魅力をより整理し、それらを通じ日本人の美意識や精神性を理解してくださる国々や人々を囲い込み、観光資源の活用策を開拓していかなければならないと思っております。
話は少しそれますが、先日、東山で聞いた話によると、荷物を紛失してしまい諦めていた外国人の方が警察官に捜索依頼をしたら、その日のうちに荷物が見つかり、手元に返ってきたことを大変喜び感動していたそうであります。他国と比較し治安水準の高さや親切な警察官がいたということが、外国人にとっては大きな京都の魅力に感じたそうであります。京都に住む我々京都人にとっては当たり前のことでも、日本の治安力は外国人に対して観光誘客のアピール要素になることも我々は改めて気づき、そういったことも観光都市としての信頼を得ているのだなと、自国の文化社会に感謝しなくてはいけないと感じた次第であります。
それらを含め、今後はぜひこうした観点も考慮した観光誘客を行うよう求めておきます。
次に、繁華街における交通事故防止対策と夜間の違法駐車対策についてお尋ねします。
ことしの4月12日、暴走する軽自動車が次々と歩行者をはね、運転していた男性を含む8人が亡くなり、11人が負傷するという大変痛ましい交通事故が発生いたしました。改めまして、亡くなられた方々の御冥福と、負傷された方々の一日も早い御回復を心よりお祈り申し上げる次第でございます。
今回のような痛ましい交通事故を防止し、一日も早く、訪れる人々が安心して観光できるまちを取り戻すことも、これからの祇園地区にとっては重要な課題の一つと考えます。また、祇園地区は、京都を代表する観光地であるとともに、多くの人々が買い物や飲食を楽しむ繁華街でもあることから、交通安全対策も非常に重要となっております。祇園地区においても、今回の交通事故を機に、交通環境の整備や交通規制の見直しなど、行政や府警本部に御尽力いただくとともに、地元の方々やボランティア団体とも協力して、効果的な交通安全対策を行うことが必要であると考えております。
そこで、警察本部長にお伺いいたします。祇園地区を初めとした繁華街における交通事故防止対策について、御所見をお願いいたします。
また、祇園地区におけるもう一つの問題として、夜間における風俗業関係者の違法駐車問題があります。具体的には、祇園地区に派遣されるコンパニオンやホステスなどの送迎車両の違法な駐車でありますが、深夜駐車する車両からは大きなエンジン音、乱雑なドアの開閉音、運転手同士の大きな声での会話、さらには携帯電話の呼び出し音などが、静まりかえった夜の街角に鳴り響き、地元の方々にとって大きな脅威となっております。また、これらの光景は、古都京都の夜の風情を楽しむ観光客にとって迷惑以外の何物でもありません。これら夜間における風俗業関係者の違法駐車に関しては、早急に手当てをしないと、停める場所があると思ってますます乗り入れてほしくないデリバリーヘルス車両が祇園地区に集まってくるばかりではなく、犯罪の温床ともなりかねないと危惧するところであります。
 そこで、警察本部長にお伺いします。祇園地区における夜間の違法駐車解消に向けた取り組みについてお答えください。なお、昨夜からけさにかけて地元の皆様から連絡がありまして、違法駐停車禁止の看板を祇園地域で警察の方々が設置をしているというお話を受けました。地元の関心の高さと反応のよさを改めてうかがえるお話として紹介がてら、一般質問に間に合わなかった非礼をおわびし、迅速な対応に感謝と御礼を申し上げたいと思います。
次に、がん対策についてお聞きします。
2人に1人がかかっているとも言われるがんは、今や国民病とも言われております。一方で早期発見をすれば、8割から9割の確率で治るとも言われております。そのような状況の中で、先立って京都府は「大切な人からひとへ贈る…がん検診受診メッセージ」を募集する取り組みを始められました。そのチラシによると、今や死因のトップはがんであり、実に3人に1人ががんで亡くなっているとのことであります。また一方で、早期発見で生存率に大きな差が出ていることをグラフで示していただいております。ただ、日常生活において、早期のがんには自覚症状がほとんどないことも事実であり、そのためにもがん検診が非常に大事となり、府民を挙げてがん検診を受ける取り組みが必要であります。
京都府におけるがんの受診率は相対的に低く、平成22年度の数値で見ると、乳がんこそ全国中位の25位、20.5%ですが、胃がんは43位、6.0%、肺がんは38位、12.2%、大腸がんは40位、12.7%、子宮がんは41位、19.3%といずれも全国下位にあります。しかし、これまでの取り組みががん検診の受診に向けた府民一丸となった取り組みとなっているのかといえば、必ずしもそうではないと思います。関係者やがんへの関心の高い方たちだけでなく、全ての府民にがん検診に関心を持ってもらうことが大切です。がん検診を受診することが府民一人一人にとっていかに大切であるか、早期発見、早期治療が家族を初めとする大切な人を守るためにいかに大切であるか、息の長い取り組みが必要であります。キャンペーン期間だけでなく、常にがん検診を受診してもらえるような広報・啓発が必要であると思いますし、キャンペーン期間だけの取り組みになってはいけないと思います。
受診率が低いという厳しい環境の中、さきに言いましたが、がん検診受診メッセージの募集を始めておられるということは、単なるスタンプラリーやウオークといったイベントだけではなく、息の長い取り組みをしていこうとの心意気だと思いますが、そのためには、より多くの人からメッセージをいただくことが必要です。募集期間は既に始まっています。しかしながら、このような取り組みがされていること自体知られていないのが現実であります。間違っても関係者を中心とした募集のようなことはやめていただきたいと思います。より多くの方からメッセージを募集するために、具体的にどのような取り組みをしようとしておられるのか、お示しいただきたいと思います。また、メッセージを募集するチラシを見る限り、これからのがん検診受診の取り組みに結びつけていこうというような案内はどこにもありません。メッセージに応募すれば抽選でプレゼントがもらえるようですが、単にメッセージを集めることが目的ならば本末転倒であると思います。
そこで、お伺いします。いただいたメッセージを、がん検診受診の取り組みにどのように結びつけていこうと考えておられるのか、具体的にお示しいただきたいと思います。また、乳がんや大腸がんといったように個別のがんに着目した取り組みだけでなく、メッセージ募集のような取り組みを始められるのであれば、総合的な受診率の向上の取り組みも行うべきと思います。そろそろ来年度予算に向けた検討が始まると思いますが、受診率向上に向けて、どのようなことを考えておられるのか教えていただきたいと思います。
関連して、新聞報道によりますと、がんと診断されたときに働いていた人の23.6%が退職され、そのうち9.7%の方が再就職できなかったとのことであります。また、府内がん患者の状況は20歳代から50歳代までの働き盛りが患者全体の約2割を占めるとのことであり、働き盛りの方の多くが生活に対する不安を抱えて闘病生活を送られているのではないでしょうか。がんの治療を続けながら職場復帰ができるような取り組みも同時に検討していくことが必要と思いますが、この点についての京都府としての取り組みについてお示しいただきたいと思います。また、がん対策の推進には、がん診療連携拠点病院を中心に、地域の医療機関との連携を強化するなど、医療提供体制の充実を図っていくことが重要と思います。
今後、京都府におけるがん医療の水準の向上を目指して、緩和ケアの推進も含め、先進的な治療機器の導入や高度で専門的ながん診療に対応できる専門性の高い人材育成・確保が喫緊の課題と考えますが、府としてどのような取り組みを進めていこうとしておられるのか、お示しいただきたいと思います。
以上で質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

◯議長(近藤永太郎君)
山田知事。
〔知事山田啓二君登壇〕

あらまき隆三

荒巻隆三
(あらまきりゅうぞう)

  • 昭和47年10月27日
    京都市生まれ
  • 自民党府議団 代表幹事
  • 議会運営委員長
  • 京都地方税機構議会 議長
  • 京都実業団剣道連盟 会長
  • 京都府カヌー協会 会長
  • 元衆議院議員
  • 元株式会社ワコール社員

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