平成27年環境・建設交通常任委員会

所管事項の調査
下記のテーマについて、参考人から説明を聴取した後、質疑及び意見交換が行われた。
・駅活性化の取組について

◯荒巻委員長
まず、所管事項の調査についてでありますが、本日のテーマは「駅活性化の取組について」であり、参考人として、京都大学大学院工学研究科教授、交通政策研究ユニット長の中川大様に御出席いただいております。
本日は、大変お忙しい中にもかかわらず、本委員会のために快く参考人をお引き受けいただき、まことにありがとうございます。
中川様におかれましては、京都大学大学院工学研究科修士課程を修了され、建設省、国土庁勤務の後、東京工業大学助手、京都大学助手、同大学大学院助教授を経て、現在、教授として、都市社会工学を専門に御研究されていると伺っております。
また、これまで、さまざまな行政のプロジェクトに参画され、京都府におきましては、現在、「駅再生プロジェクトアクションプラン(仮称)」検討委員会に参画いただき、同プランの策定に御尽力いただいているところであります。
本日は、そういった日ごろの御活動を踏まえたお話をお聞かせいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
では、中川様、一言お願いいたします。

◯中川参考人
京都大学の中川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

◯荒巻委員長
それでは、参考人の御意見を拝聴いたしたいと思いますが、説明の準備が整うまで、しばらくお待ち願います。
それでは、中川様、よろしくお願いいたします。

◯中川参考人
それでは、改めまして、京都大学の中川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、駅と駅周辺の活性化ということでお話をさせていただくことになっております。ただいま御紹介いただきましたように、私は京都大学の工学研究科におりますが、工学研究科に設置いたしております交通政策研究ユニットのユニット長を拝命しております。
まず、交通政策研究ユニットでございますけれども、昨年の春に、京都府の山田知事さんと私どもの松本前総長が、京都府と京都大学との間で交通政策に関する連携協定というものに調印をしていただきまして、京都府と京都大学における京都府の交通政策に関する連携協定に基づいて、京都大学にこのユニットを設置させていただいておるものでございます。
京都府下におきましては、さまざまな交通政策に関する課題がたくさんあると思います。新幹線のような都市間交通からJRを初め、あるいはKTR(北近畿タンゴ鉄道)、現在の京都丹後鉄道ですが、鉄道ネットワーク、あるいは各市町のコミュニティバス、その他、いろいろ交通に関する課題がございますので、それに対して、京都府と連携しながら、京都大学として取り組ませていただいているものでございます。
また、このユニットでは、京都府の職員の皆さんですとか、あるいは府下の市町の皆さん、あるいは交通事業者等々に来ていただきまして、そこで講義をさせていただきまして、そこで交通政策に関する新しい考え方などについても学んでいただくといったことをさせていただいております。
京都府からは大変な御支援をいただいて実施をしておるものでございます。改めて御礼を申し上げたいと思います。
さて、本日の課題ですけれども、都市政策あるいは交通政策の面から見て、一つの重要な課題であると考えられます駅及び駅周辺の活性化ということについて、私のほうから最初にお話をさせていただきます。
先ほど少し御紹介いただきましたように、京都府のほうで、現在、駅再生のためのアクションプランを作成しておられますので、その中に私も参画させていただきまして、一緒に議論をさせていただいております。
きょうは、まずは、最初に駅及び駅再生について踏まえておくべき視点をさっとお話をさせていただきまして、後半部分において、駅再生プランに関することについて触れさせていただこうと思います。それでは、少し中身に入らせていただこうと思います。
まず、駅ですけれども、これは言うまでもないことですけれども、駅というのは、鉄道と都市が出会うところです。鉄道と都市というのは、本来、大変良好な関係を築くことができるはずのものです。鉄道があることによって、都市に活力がもたらされて、そして、都市が活力を持っていることによって、鉄道の利用者もふえていく。鉄道を支えることができていくということで、鉄道が便利になれば都市に活力をもたらし、都市が活力を持てば鉄道もますます元気になることができるという、これが本来、都市と鉄道の間で考えられる良好な関係であると今、考えられます。
ところが、実際には、必ずしもそういう良好な関係が簡単に築かれるわけではありませんでして、かなり多くの場合、特に、地方のローカル鉄道の駅などにおいては、必ずしもそういう方向には行っていない場合が多い。逆に都市の活力がだんだんと低下をしていって、そして、それに伴って鉄道の利便性、本数が少なくなったり、運賃を値上げせざるを得なくなったりして、むしろ使い勝手が悪くなっていくと。そうすると、また、それが都市の活力低下にもつながっていくという、むしろ負のスパイラルに陥ってきたと言わざるを得ないような駅も少ないと考えられます。
そういったようなことを考察しますと、駅と都市の良好な関係というのは、改めて構築をしていく必要があると考えられるわけでございます。
少し写真なども含めながら、お話をさせていただこうと思います。これはあるローカル鉄道の駅の周辺を写した写真です。実際には、これは京都府下ではありませんでして、お隣の福井県の小浜線の沿線の駅、ある駅から見た光景でございます。この線路、これできてからもう90年以上たっていまして、たっていますけれども、現在においても、駅の周りは、ほぼ都市的な利用はされていないという状況です。
こういう駅は日本中にいっぱいありまして、例えば、都市計画において、市街化調整区域に指定されているところに存在している駅というのは、日本中にいっぱいありまして、都市計画においては、駅の周りに家を建ててはいけないといったことを何十年もにわたって、そういう決まりを決めてきたということであります。
こういうような状況ですと、これは鉄道が幾ら頑張ってもお客さんはほとんどいません。昔は、駅から2キロ、3キロ離れたところに、ずっと奥のほうを見ますと、大分離れたところに少し集落が見えています。昔は、そういう遠く離れた集落からでも、皆さん、いろいろな手段で駅まで出てきていただいて、利用していただけたのだろうと思います。今、誰もが車を持っている時代になりますと、駅から遠く離れたところに集落があっても、鉄道を利用する人は、ほとんどいないという状況になっていまして、こういう状況になりますと、今度、鉄道の側は、なかなか運行本数を上げることもできないということで、この小浜線なども1時間に1本あるかないかという運行にならざるを得ない状況です。
鉄道の側の利便性が高くならなければ、駅の近くに家を建てたり、会社をつくったりというインセンティブは全くなくなりますので、このような状況でずっと放置されたままになってきているという状況です。これでは、なかなかまちのにぎわいにもつながりませんし、また、鉄道の活性化にもつながらないといった、どちらかというと、マイナスのスパイラルになってきていたということだと思います。
例えば、この周り、田んぼが見えておりますが、もちろん田んぼも非常に重要な、農業空間は大変重要なものですから、潰していいということではないわけですが、実際には何が起こっているかといいますと、この駅の周辺の田んぼ、畑、これは開発はできないという規制になっていながら、実は、ほかのところでは開発が、自由にということでは全くありませんけれども、どんどんと進んでいる状況にある。駅から離れたところでは、どんどんと田畑がなくなっていっています。
どのまちもそうですけれども、都市的な土地利用というのは、1970年代以降、自動車が普及した後に、全国平均でほぼ1.5倍ぐらい都市的な土地利用がふえております。その分、田んぼや畑がどんどんとなくなっていっているといった状況になります。
ですので、実際の状況としては、駅前は都市的な利用がほとんどされないままで、実は駅からずっと離れたところで、田んぼや畑がどんどんと開発をされていって、低密度に広がる市街地ができているといった状況になってきているのが、実際であると考えられます。
このあたり、都市政策と交通政策、あるいは農業政策なども含めて、トータルのまちづくり、地域づくりというのを目指していく必要があると考えられます。そういう意味では、起点となります駅というのが大変重要な役割を果たしていると考える必要があると思います。
きょうは、駅及び駅周辺のことについて話をさせていただきます。駅というのは、鉄道とまちを結びつける非常に重要な場所です。これまではなかなかそういう視点からの駅及び駅前広場の整備なども行われてこなかった面があります。ここに幾つか、大きなまちから小さなまちまで、幾つかの駅前広場の写真を並べております。かなり多くの場合、これまでの発想では、駅前広場というと、広くて、自動車、バスやタクシーも含めて、あるいは自家用車などが便利に回転できるような、そういう広い駅前広場こそ立派な駅前広場だと考えられてきた面がありまして、新しくできた駅の周辺なども、こういったような形で、自動車のための空間を非常に広くとるといった設計が行われてきたわけです。実は、こういうようなレイアウトにしていることによって、逆に駅とまちの間の分断が起こってしまっていると。駅前広場が非常に広いために、まちと駅が離れたものになってしまっているといった設計になっているところが、かなり出てきています。
例えば、駅から、その道路の向かい側のまちに行くときに、横断歩道などが設けられていなくて、歩道橋といいますか、上を渡ったり、あるいは地下道を渡ったりしなければいけないような構造にしているようなところは、実は便利なように見えますけれども、駅とまちの間の人の流れを分断してしまっていて、駅の前のまちがにぎわわないといった状況が起こっています。駅が完全にまちから分断をされてしまっていて、単に自動車アクセスのための駅前広場だけが存在しているといったようなことになってしまいますと、なかなか駅ににぎわいが出てこないし、まちにもにぎわいが生まれないといったふうになっていますので、駅とまちとの間の歩行者動線のあり方、あるいは駅からいかに公共交通などを使って、ほかの場所に移動できるようにするかということについて洗練された設計をしていく必要に迫られてきていると考えられます。
駅前広場に対するこういった考え方なども、自動車が急速に普及した過程の中で定着をしてきましたけれども、また改めて、新しい時代に向けて、歩行者や公共交通を中心としたにぎわいのあるまちをつくるための発想というのも、一方では必要になっていると考えられます。
さて、もう少し広い視点から、駅とまちとの関係を見てみたいと思います。
これは全体の都市圏構造の中において、鉄道及び駅が占めている役割について述べた幾つかの論文から絵を掲げております。左側が、これは大変有名なニューマンとケンワーシーという人があらわした将来に向けての持続可能な都市の姿であると言われています。これは少し90度回転させています。このままではわかりにくいかと思いますが、何が書かれているかといいますと、鉄道があって、その駅があって、その周辺にまちを集約させていくといった考え方がこれからのまちづくりであると、このニューマン・アンド・ケンワーシーは述べているわけです。
これは、実は日本では当たり前といいますか、鉄道の駅を中心として、まちをつくり上げていくという、特に駅の周りにしっかりとしたいいまちをつくって、コンパクトな都市構造にしていくというのは、日本では、もう随分前から常識的にとられてきた手法です。これこそが、実は、これからの時代に向けての理想的な持続可能都市の姿であると、世界的権威の人たちが言っているといった状況になっています。
右側は、村尾交通政策課長の論文などから引用させていただいていますけれども、これは京都府の南部の、京都市よりも南の京都都市圏と呼べるような部分について、鉄道ネットワークを模式化に出して描いたものです。左側の、この有名な持続可能な都市の姿と、この右側の京都都市圏の姿はかなり似ていると。鉄道を中心として、コンパクトな都市構造にしていくという、世界の模範となるような、そういう都市圏をつくっていける可能性が十分あるといったことが、こういった図からもわかると思います。
これは、この地域だけではなくて、もっと北のほう、丹後地方、丹波地方あるいは南のほうにおいても、かなり鉄道ネットワークがしっかりとできていますので、それを中心とした都市づくり、都市圏づくりをしていくということは、京都府内においては十分可能であると思われます。
ただ一方では、なかなか駅の周辺には活力が、かつては活力があった駅においてもなくなってきている駅がたくさんありまして、鉄道の側も不便になっていくし、駅の周りも若干寂しくなっていくと。駅の周りの商店街なども元気がなくなってきているといった状況になってきているところがあります。これはモータリゼーションの進展に伴って、駅と関係ないところでも十分生活が成り立つといった状況になってきましたので、近年ではショッピングセンターなどの買い物施設や、病院、あるいは役場などの公共施設であっても、駅や中心市街地から離れた郊外部に立地をするということなどもふえてきてしまっています。
そういう意味で、駅を中心としたコンパクトな都市づくりというのは、なかなか二、三十年の間は進んでこなかったわけですが、改めてこういったことを念頭に置きながら、駅周辺の整備、再生をさせていく必要があると考えられます。
幾つかのまちでは、鉄道をしっかりと便利にすることによって、その駅の周りにしっかりとしたまちを築いていくと。これがコンパクトな都市構造のつくり方であるというようなことから、政策が打ち出されている場合がございます。ヨーロッパなどでも、あるいはアメリカなどでもこういう考え方は、近年の都市政策のあり方として、非常に採用されるようになってきています。右側は、ライトレールなどをつくってまいりました富山市が掲げているもので、串だんご状の都市と富山市では呼んでいますが、鉄道の駅の周辺におだんごのように、しっかりとしたコンパクトなまちをつくっていくといった政策を実施しておられます。そういう意味でも、この起点となります駅が、非常に重要な役割をするということがわかるかと思います。
その次には、まちのにぎわいということについて、若干触れておきたいと思います。ここは、必ずしも駅とは直接関係する部分、本来かなり関係しますけれども、若干省略をしながらお話をさせていただこうと思います。
まちににぎわいがなくなってきていると言われています。特に、地方の中小都市においては、そういうことが言われてきていますが、まず、ここでは、にぎわいというのは一体何だろうかということを原点に返って少し考えてみますと、多くの人が集まっているような状況、特に歩いていたり、立ちどまっていたり、そういったような楽しく過ごしているような人たちがたくさんいる場所、これをにぎわっていると呼びます。
一方、道路を自動車で埋め尽くしても、これはにぎわっているとは決して言いません。これ、右側は、今、話題になっています京都市の四条通の写真です。ここは自動車で幾ら埋め尽くしてもにぎわっているとは呼ばないわけで、にぎわいのための空間である歩行者空間をいかに広くしていくかということを考えるのが、当然の方向ですので、今、歩道を広げて、歩行者のための空間をつくり出そうといった政策をとっておられるというのは、これは世界の大きな流れにも合致するものです。また、にぎわいをつくり出すという方向に向けても、大変いい方向だと思います。
一方、こういった大きな都市だけではなくて、小さなまちも同じような状況にありまして、実は世界中を見ても、人口の少ない小さなまちで、町なかが大変にぎわっている。魅力的で多くの人が、道路、中心市街地の商店街などを歩いているといった姿は非常によく見かけます。
地方の都市でもにぎわっていて普通だというような感じにすらなってきていると考えられます。日本の地方都市は、にぎわいを失っていると言われている状況にあります。そういうところも、実は、交通政策と非常に密接に関係がありまして、右下のような、これはある地方都市の中心市街地ですけれども、シャッターが閉まっていまして、にぎわいが全くないばかりか、この写真を見たらわかりますように、にぎわうための空間がそもそもないということですね。
商店街の道路、これ拡幅などをして広くしたわけですけれども、広くしたことによって、ふえたのは自動車のための空間であると。先ほどの写真からもわかりますように、にぎわいを生み出すのは歩行者のための空間であって、自動車の空間というのは、どんなに自動車がいっぱい来ても、にぎわっているとは呼びませんので、これは自動車のための空間をふやしただけであって、むしろ、にぎわいの空間がなくなっているといった構造になっています。こういうところでは、最初からにぎわわないことはわかっています。にぎわうための空間がありませんので、絶対ににぎわうことはありません。
例えば、よくある、これ日本の都市の中の道路です。左側、歩道がないような狭い商店街、これも日本の中にいっぱいあります。左のような歩道のない商店街ですが、区画線が両側に白く引かれていまして、そして、その内側といいますか、道路側のほうには、自動車のための空間になっています。左側のような断面にしたということは、商店街を自動車のための空間にしたということですから、商店街ににぎわいの空間がなくなってしまっていると。道路交通法の10条によりますと、これは右端に沿って歩かなければいけないことになっていますので、道路の真ん中を歩いてはいけないということになっています。にぎわってはいけないということが法律で決まっているといったことになっているということで、100%、こういう道路がにぎわうことはありません。
右側の道路は、辛うじて歩道がありますので、少しにぎわう可能性はありますけれども、なかなかこういう構造では、例えば、商店街のそもそもの魅力というのは、道路の右側にも左側にも商店があって、どちらにも魅力的な店があって、買い物ができるという、これがもともとの商店街の魅力です。道路を横断する、自動車に遠慮しながら、クラクション鳴らされながら、道路を横断しなければ楽しい買い物ができないといった道路構造になっている。こういう商店街は、最初からにぎわう可能性はない。道路によって、にぎわいが分断されていると言うことができます。
世界では、かなり考え方が変わってきていまして、この後は、写真を並べているだけですので、若干いろいろと見ていただけたらと思います。ここは省略させていただきます。小さなまちでも、にぎわっているまちというのは少なくありません。当たり前ですけれども、にぎわいの定義というのは、歩行者がゆっくりと歩いているという姿をそもそもにぎわいと呼ぶのですから、この歩行者空間を写していますけれども、歩行者空間があるところだけがにぎわう資格があると言ってもいいわけです。
いろいろな国のいろいろなまちを写しています。ある程度、人口10万人以上あるようなまちから、この後紹介しますが、人口数千人程度のまちまで、もっと小さいまちもありますが、そういったまちまで、同じような手法でもってにぎわいを売り出し始めています。
例えば、これはイギリスの全く無名の都市です。余り御存じじゃない都市が並んでいると思いますけれども、いずれも、まちの中は歩行者のための空間になっていて、商店街をみんな多く人が楽しみながら歩いていると。
次はオーストリアの、これもほぼ無名の人口規模の小さい都市ですね。人口400人のまちまであります。それぞれ工夫をしながら、にぎわいを生み出していっています。この中で、実は非常に駅が大きな役割をしていますので、後からもう少しお話をさせていただきます。
一方で、これは、ある日本のまちの駅の周辺ですね。右端に駅があるのがわかるかと思いますが、駅の周辺のまちの状況をあらわしたものです。お店を青く塗って、駐車場を赤に塗っております。駅の周りが駐車場だらけということで、これは、どこの地方都市でも、塗ってみると必ずこうなります。京都府内の幾つかの都市でも同じように描いてみましたけれども、ほとんど真っ赤になると言ってもいいぐらい、駐車場だらけとなっています。
駐車場をつくると、中心市街地に人が戻ってくるのかと多くの方が思っておられたかもしれませんが、どんなに駐車場をつくっても、都市の中にはにぎわいは戻ってこなかったというのは、これが現実です。むしろ、商店街の中に虫食い状に駐車場ができてきたことによって、商店街の魅力が失われてきたと。この絵からもわかりますように、車をとめるところはどこにでもあるけれども、車をとめたところで、どこで買い物をするんでしょうかといったような状況に陥ってしまっている都市が多くなってきているということで、かなり発想を変えて、まちのにぎわいを生み出していくような方向にしていかなければいけないと言えるかと思います。
こういう形で、いろいろなまちを調べていきますと、かなり典型的に、ここでは「セオリーはほぼ確定」と書かせていただきました。まちの中に歩行者空間、豊かな楽しめるような歩行者空間があるかどうかということが、まず最も重要であると。そして、公共交通を便利でわかりやすく、鉄道やバスなどで多くの人に来てもらえるような仕組みにすると。
それから、もちろん自動車で来てくれる人も歓迎ですので、駐車場などは準備するのは当然ですが、まちの中に虫食い状に駐車場をつくったのでは、むしろまちの魅力が失われていくということで、駐車場は歩行者空間の外側に、これはフリンジ駐車場というような呼び方もしますが、歩行者空間の周りに駐車場を設けることによって、まちの中は車からおりて歩いて楽しんでもらうといった構造にしていったところが、にぎわいを取り戻しているということが言えます。
これは海外でも日本でも共通したことで、日本の中でも、にぎわっていると言えるような地方都市は、かなり多くの場合、この手法を使っているということで、例えば、近くでは長浜ですとか、近江八幡ですとか、あるいは豊岡市の出石ですとか、こういったようなところ、それぞれまちの中に歩行者空間を設けながら、にぎわいを生み出していっているといったようなことでありますので、これはもう共通した認識だと考えたほうがいいと思います。
もちろん、それだけやれば必ずにぎわうわけではありませんので、いろいろな景観のデザインですとか、あるいは歴史的な建造物の活用ですとか、食の魅力、名産品、イベント開催、さまざまなまちおこし活動というのはあり得るわけです。少なくとも交通面において、こういった対応をしないままイベント等でにぎわいを生み出そうとしても、これは限界があると言えるかと思います。
こういうようなことからも、駅を中心としたまちづくりを行っていくということの重要性がある程度わかっていただけるかと思います。
先ほど、紹介しましたオーストリアのまち、それぞれ今の3点セットが備わっているということを幾つか写真でお示ししていますが、2)の公共交通の充実という、ゼーフェルトなど、人口3,000人のまちです。これは駅です。鉄道駅の中心に歩行者空間をしっかり豊かにつくっていると。そして、周辺部に駐車場を用意している。こういうことによって、町なかににぎわいを生み出しています。
次は、1万4,000人のバードイーシェルというまちです。これも同じように、駅と歩行者空間の組み合わせによって、大変にぎわいを生み出しています。
それから、これはもう少し大きなまち、ザンクトペルテンという人口5万人のまちです。これは左下の正面に見えているのが鉄道駅でして、鉄道駅からまちにつながるところを歩行者のための空間にしているということで、これもまちの中はにぎわっているということで、およそ、人口数千人から1万人あれば、にぎわう資格は十分にあると考えるのが常識だと思います。また、人口5万人のまちでは、にぎわっていて当たり前だと言ってもいいかと思います。人口5万人といいますと、京都府の市の中では、むしろ小さいほうに当たるかと思います。ですので、これよりも大きなまち、京都府内にもたくさんあるわけですが、こういった施策の中でにぎわっていく可能性が十分あると思います。
こういったようなことから、ここまで概略としてまとめてまいりましたけれども、駅を中心として、しっかりとにぎわいのあるまちづくりをしていくことが重要であるということをお話をさせていただきました。
ここから先、もうかなり時間が迫ってきておりますので、簡単に述べさせていただきたいと思います。京都府の皆さんと駅再生のための取り組みについて、現時点において考えていることを、これは、京都府の皆さんが中心になっておつくりになられた資料です。それに従って若干お話をさせていただきます。
まず、繰り返しになりますけれども、駅というのは、地域の拠点の一つであるはずで、歴史的に見てもそうであったわけです。また、将来においても期待できるものであるということですが、なかなかこういうにぎわいが失われているところもありますので、どうすればにぎわいが戻ってくるのか、どうすれば若い世代が戻ってくるのか、こういったようなことを議論をさせていただいているということです。
駅だけを取り出して、駅だけがにぎわっているという状況はなかなか想像しにくいですので、駅及び駅の周辺、そして市街地中心部の昔からあった商店街も含めて、にぎわいは生み出されていくということが大変重要です。また、それは駅員が起点になるということで、さまざまな工夫をすることが重要であるということは、この絵の中からも語られております。
さらに、もう少し具体的に、駅において何をしたらいいのかということで、トイレ等の基本的な機能があることはもちろんですが、現在のところ、そういった基本的な機能すら、若干使いにくいようなものになっていたりしますので、駅自体が寂しくて古い状況にあるものも少なくありませんので、そういうところの改善も、当然重要であります。さらに情報発信機能であるとか、福祉サービス機能でありますとか、そういったようなものを駅に付加をしていくということで、にぎわいの拠点となっていくことができるということが書かれております。
さらに、少し駅を分類をしていただいたものです。かつて、まちの中心としてにぎわっていた駅、具体的な駅名も挙げていただいていますが、あるいは観光や産業の拠点としてにぎわっていた駅、交通結節点としての機能を有した駅、日常生活の拠点となっていた駅、こういった駅、だんだんと自動車の進展、モータリーゼーションの進展とともに、郊外部にこういった機能を次第に奪われていってしまって、なかなか拠点性を持てない状況に陥っている駅も少なくないと考えられますが、先ほどからも御紹介していますように、世界のまちづくりの動向から見ても、むしろ日本よりも鉄道が発達をしていなかったという国ですら、駅を中心としたまちづくりが進んでいるという状況の中で、日本においても非常に大きな、改めてにぎわいの拠点となる可能性というのはあるということで、そのために、それぞれの性格を持った駅において、どういう手法があるのかということについて、この後の資料では議論をしていただいております。
これ細かいところは省略をさせていただきます。
まちの中心としてにぎわっていた駅の活性化の方向性、そして観光や産業拠点としてにぎわった駅の活性化の方向性、そして交通結節点として機能を有していた駅のこれからの方向性、さらに日常生活の拠点となっていた駅、これらも郊外のショッピングセンターですとか、コンビニですとか、そういったようなところに、そういった機能がかなり移っていっている面もありますけれども、改めて、まちの中で人が集まる場所としての駅などが拠点性を復活させる可能性は十分あると今、考えられます。
最後に、これからの議論ではありますけれども、駅再生の推進のために、府の役割ということで、まとめていただいております。しっかりした駅を中心としたまちづくり計画を立てていくということ、そして、ハードの整備ももちろんですけれども、ソフトの整備も含めて、なかなか市町村単独ではこういった駅を活用するまちづくりのノウハウというのは、なかなか十分なノウハウを持ち切ることも難しいですので、府がこういったところにノウハウを提供しながら、アイデアも提供しながら、あるいは必要な整備事業も行いながら、改めて駅を再生させていくといったプロジェクトに進んでいくのが望ましいかと思います。
これまでは、日本では、ややもすれば、駅というのは鉄道事業者がみずからつくっているものであって、鉄道事業者の営利目的の施設であるかのように捉えられる面があったということも言えるかと思います。これは明らかに、まちの中心として、まちの拠点として、まちにとっては最も重要な施設であるということから、鉄道事業者とも協力をしながら、行政の政策として、駅及び駅の周辺の活性化を進めていく必要があると考えられると言えると思います。
 いただきました時間を若干超過しておるようでございますので、まずはこのあたりで私の説明を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

◯荒巻委員長
中川様、ありがとうございました。
説明はお聞き及びのとおりでありますが、もとの状況に復するまでしばらくお待ち願います。
本日の所管事項の調査におきましては、テーマについて、参考人も交えて委員間の活発な意見交換の場となるよう運営してまいりたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
それでは、御意見・御見解等がございましたら、御発言を願います。

◯松岡委員
ありがとうございました。にぎわい戦術の中で、イギリスなりオーストリアの例を挙げていただきましたが、町なかに歩行者空間、そして公共交通を便利でわかりやすく、駐車場は歩行者空間の外側ということで、これは基本中の基本だと思います。いずれもにぎわっているのは、集客施設がある、また役所とか、そういう日常生活の中にマッチしたものがないと、地元の人はなかなか来られない。また、いろいろな歴史的建物なり、いろいろなものがあれば、観光客と交流人口がふえるということで、本当に人口が3,000人や400人ぐらいのところに、こういうとこへ来られるというのは、観光とか、何か歴史的なものがあったり、工夫されて、交流人口をふやすような取り組みをされていると思います。これとマッチしたものでないと、今の高齢社会、過疎化になっているところは大変だと思います。
この辺は、地元が何かそういう知恵を絞らなければならないのですが、なかなか地元の者は気づかない。そこへ、最近、大学なり、若い学生さんが、そのまちに入って、まちづくりをということで呼び込みをされていますが、こういう中で、基本は、もう少し何が大事なのか教えていただけたらと思います。

◯荒巻委員長
御発言も尽きたようでございますので、これにて所管事項の調査を終了いたします。
中川先生におかれましては、本当に大変お忙しい中に、きょうは貴重なお時間を賜りまして、ありがとうございました。
我々環境・建設交通常任委員会としても、これからの駅再生にとどまらず、交通政策のあり方等、最も一番いい形で、まちづくりのあり方がどうしたら結びつくかということをともにきちんと考えていかないと、にぎわいの創出も、公共交通駅の再生も、現状打破、問題解決できないと思っておりますので、きちんと新しいビジョンを描いて、これからの委員会活動に反映させていただきますので、また、今後ともよろしくお願いします。
きょうは貴重なお時間を賜りまして、ありがとうございました。
また、理事者各位におかれましては、本日各委員から出された御意見・御見解等について、今後の府政の推進に当たり十分に御留意いただき、府民のため、なお一層の創意工夫をされますようお願いいたします。

あらまき隆三

荒巻隆三
(あらまきりゅうぞう)

  • 昭和47年10月27日
    京都市生まれ
  • 自民党府議団 代表幹事
  • 議会運営委員長
  • 京都地方税機構議会 議長
  • 京都実業団剣道連盟 会長
  • 京都府カヌー協会 会長
  • 元衆議院議員
  • 元株式会社ワコール社員

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