所管事項の調査
下記のテーマについて、参考人から説明を聴取した後、質疑及び意見交換が行われた。
・国定公園の新規指定を踏まえた自然環境対策について
◯荒巻隆三君
まず、所管事項の調査についてでありますが、本日のテーマは「国定公園の新規指定を踏まえた自然環境対策について」であり、参考人として、京都学園大学バイオ環境学部特任教授の森本幸裕様に御出席をいただいております。
本日は、大変お忙しい中にもかかわらず、本委員会のために快く参考人をお引き受けいただき、まことにありがとうございます。感謝と御礼を申し上げます。
森本様におかれましては、京都造形芸術大学、大阪府立大学大学院、京都大学大学院の教授を経て、現在、京都学園大学バイオ環境学部の特任教授として、環境デザイン学、景観生態学を専門に御研究されていると伺っております。
また、京都府自然公園区域新規指定専門家委員会に参画いただき、委員長として御尽力をいただいているところであります。
本日は、そういった日ごろの御活動を踏まえたお話をお聞かせいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、参考人の御意見を拝聴いたしたいと思いますが、説明の準備が整うまで、しばらくお待ち願います。
御準備も整われましたので、それでは、森本様、よろしくお願いいたします。
◯森本参考人
皆さん、こんにちは。
森本でございます。きょうは、こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。京都府の自然環境について、頑張ってやってまいりました者として、こういうところでお話できる機会をいただいて、大変うれしく思っております。
きょうは、「新規国定公園指定を踏まえた自然環境対策について」ということで、少し広い視野から見る視点を踏まえてお話ししたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
座ってやらせていただきます。
お手元にはパワーポイントのスライドコピーと参考資料をつけております。パワーポイントに足りないところを幾つか補っております。
それから、前もって、「雨庭のすすめ」という冊子を配っておりまして、これが国定公園と何の関係があるのかという話になるかもしれませんが、実は、これは最後のところで少し関係が出てまいりますので、御説明したいと思っております。
それでは、実はのっけから少し大変ですが、地球の絵があれですが、ことしのコスモス国際賞というのがございまして、御存じの方がおられたら幸いですが、副賞4,000万円のかなり立派な賞でございます。これを受賞されたのはロックストローム博士と申しまして、その方が有名になったのは、この地球の絵です。地球の環境が実は大変な状況になっているということは、皆さんよく言うのですが、では、何がどこまではいいのかと。安全運転の限界はどこだということを何十人の著名な学者を集めて調べられたということが、世界的な業績として認められておりまして、これがコスモス国際賞になりました。
その中で、生物多様性と温暖化の話、気候変動の話と、富栄養化の窒素循環の話、この三つがどうもかなりやばいという話になっております。そういう前提で、これはもう少し自然環境に優しくする、仲よくする社会、私どもは自然共生社会と申しておりますが、こういうストーリーを考えると、国定公園というのはすごく大事なものだということをお話ししたいと思っております。
実は、今回の国定公園に考えられております核心部が、ここであったことが私の現在をつくっているというか、実はたまたま訪れたことがきっかけで、京大でこういうことを扱う森林科学の専攻のほうに変わったのです。それほどのパワフルなものです。これを体験するかしないかでかなり変わる。パソコンではわからない。こういう世界が、今回、テーマになっているということをまずお話ししたいと思います。
右はNHKの「樹木ウオッチング」という番組を僕が何年か前にやっておりまして、最後に、ここを選んだわけでございます。国定公園という枠組みですが、自然公園ですね。これの歴史を振り返りますと、実はアメリカです。当初、自然公園はイエローストーンが有名ですが、「保護」だけではなくて、「利用」とセットで考えようというコンセプトが、最初からございました。永続的にするためには、ちゃんと保護もすると。それを担保しつつ、利用することで、逆に保護のパワーもつけるという発想がもとでございます。
ということでイントロとしまして、私はこういう手のことでいろいろと協力してまいりまして、京都府の自然環境、丹後半島、天の橋立、大江山の国定公園のときにも議論に参加させていただきましたが、今、福知山のほうで「千年の森づくり」のような事業にも少し参画させていただいております。
少し、結論から申しますと、実は自然環境の保全に関して誤解がございます。何かと申しますと、保護するということが第一義にあって、「寄るな、さわるな」と言うことが多いですね。実はそうではなくて、現在、結論からいうと、うまい使い方が課題だと。こういうことで、きょうの最初に持ってきたスライド、これは結論なのですが、後でまた出てきますので、説明してまいりたいと思っております。
国立・国定公園に、私がかかわっておったのは、この前、総点検事業というのをやりました。これは生物多様性条約の締約会議を我が国でやるというので、国が国定公園の見直しをやったんですね。今、保護するところ、マネジメントするところが少ないと。もっとふやしたいというところです。それで、大事なところと、それから利用する可能性のあるところ、危ないところ、大事であるにもかかわらずまだ保護されていないようなところのギャップを調べたことがございます。
それで、今回の芦生のあたりとかが大事なところだという結論が出まして、候補地に入りました。これがCOP10を愛知県の名古屋でやったときに報告されて、日本の国際公約にもなるんですけど、国定の決議を受けて、戦略目標として、保護地を内陸水域の17%は設定しますということを言ってます。これを受けて、国立・国定公園の拡張をしようという話が背景にございまして、今回、候補地の選定があったということでございます。
自然とか、そういう美しい風景というのを翻って考えてまいりますと、実は我が国の自然景観というのはすごく箱庭的です。これはなぜかと申しますと、この前も大変な地震がございましたが、もう皆さん、テレビでよく御存じだと思いますが、プレートが日本列島のあたりで4枚もひしめいておりまして、しゅっちゅう火山は噴火するし、地震は起きると。世界で一番の地殻変動帯といってもいいと思いますね。
逆にそれが、実はいろいろな多様な自然環境のモザイク構造を生んでおりまして、それが生き物の多様な住み場所、ハビタットというんですが、これを提供しているということになります。その結果、生き物の数、種類を数えますと、大体熱帯が圧倒的に多いのですが、温帯地域の島国として、例えば、イギリスと比べますと、日本ははるかに固有性と種数に富むのです。イギリスは、割合安定した島です。そういうことがございまして、基本的にそういう条件にあるという前提で少し考えていただきたい。にもかかわらず、その自然性が残っているところというのは、比較的少ないということがございます。
幸い、森林が66ないし67%ぐらいありますが、その中でも自然性の高いところは少ない。だから、先ほど申しましたような人の心をつかんで放さないような、芦生のような森が、実は極めて少ないということでございます。
ただ、国立・国定公園の保護と利用という見地ですが、これの経緯を考えますと、実はかなり視点が加わってきて、変化してきている面がございます。基本的に、すぐれた自然景観を、風景地を保護するだけではなくて、利用の増進を図る。それから、生物多様性の確保に寄与するというのが、現在の日本の国立・国定公園の目的になっております。ただ、残念ながら、日本の場合は、アメリカの営造物と異なりまして、地域性です。指定して、所有者等の権利制限等で調整を図っていくという地域性の公園でございます。
この中でいろいろ課題はありますけれども、北海道から南の諸島に至るまで、日本列島全体の生物多様性、生き物の種類といったものを担保していく、屋台骨であることには間違いございません。
基本的に、自然そのものというよりも、実は風景です。これは非常に大事な視点で、風景というのは、ほっといても勝手にできる景観ではなくて、人間の営みとともに形成されてくるものです。だから、日本の場合、どこが最初に国立公園に指定されたかと申しますと、名所であるとか、旧跡であるとか、伝統的な探勝地なのですが、このころ、戦前ですが、富士山とか、そういう日本人としてのアイデンティティーを確保するという、志賀重昂さんの日本風景論というのがございまして、少し戦前のよくないイメージと重なりますが、愛国心に駆り立てるような、そういう視点が、最初はかなりございました。これは事実です。
ただ、その後、戦後になって変わってきたのは、外国人が入ってきます。進駐軍が入ってきます。そうすると風景の再発見がございます。どうやって自然とうまくつき合っていくかというので、当初は、ゴルフ場まで自然の中でする遊びではないかというので、自然公園の中の施設として位置づけられたこともございました。その点、風景として何を担保して、何を使っていくかということは、結構、時代によって変わってきていますが、昔のがなくなったかというと、なくなっておらずに、どんどんつけ加わっております。この辺は、参考資料のほうで、参考3と書いていますが、ここにつけ加わってきたいろいろなコンセプトを整理してございまして、いろいろな国立公園、国定公園ができてきたという過程を見ることができます。
最近ですが、特にお話しておきたいのが、里地、里山あるいは広大な湿地もそうですが、生き物の多様性、この二つの視点を非常に大きな要素として考えようということなのです。そのために、当然、規制計画はいろいろございます。それから、事業計画をやってまいります。ここで幾つかのタイプがありますが、利用規制、保護規制の中で、例えば、利用調整と申しまして、利用する人数も調整しようというツールもございます。これはこれまでほとんど使われておりませんので、もう少し真面目に考えたほうがいいのではないかと私は思っております。理由は、また後ほど申します。
それから、公園計画というのは、事業計画がいろいろございまして、今回も、多分ビジターセンターとか、そういうものを考えられているようにお伺いしていますが、うまく使うための仕組みや計画を立てていく、これが大事です。
基本的に、御存じかと思いますが、公園地域には、行為の実施が許可制の部分と届け出制の部分がございます。それ以外に、利用調整等を図るようなところができるということでございます。そういうことで、この辺はパスしますが、お話ししたいのは、公園といっても地域によって非常に多様なもの、だから、今回検討されている対象も、そこならではのあり方、これを地元の人たちとともにうまく使っていく仕組みをつくっていくというのが、これが課題だと思っております。
ですから、非常に原生的な自然ばっかりの国立公園もございますが、そうではなくて、瀬戸内海も国立公園でございます。また、日ごろの営みというのですか、これがベースになった里地・里山というのがございます。里地・里山というのが、今となって言われるのですが、一番最初は、国立公園の中でも、例えば、キリシマツツジの大景観は明治天皇もごらんになったということで有名になった景観でございますが、あれも実は、寄るなさわるなの原生的な風景ではなくて、放牧していたという、その景観で維持されているという面がございます。
だから、自然資源を持続可能なようにうまく使っていくということで生み出した風景、これが、今現在、結構危機的な面はございまして、この国定公園の指定をきっかけに、そういうものに取り組むチャンスにもなればというのが、私のアイデアでございます。
生物多様性の危機と取り組み、これを考えるときに、一番最初に申しましたように、今、日本は森林飽和と言われる状態にございます。我々の分野では結構ベストセラーなのですが、森林飽和ということを書かれた先生が、東京大学の名誉教授で砂防学会の会長、砂防学の権威でございます。要するに、はげ山を緑にしてきた先生が、今、副作用に目を向けなさいという話をされる時代になっています。
世界地図を少し見ていただきますが、これは何かと申しますと、森がないのは乾燥地とか熱帯雨林、これは大変悲惨な状態です。ところが、温帯のほうは、逆に、うまく使われないことによって、回復してきたが、その副作用が逆に出ているところでございます。
その結果、生物多様性の損失というのが、我が国で深刻化しております。これを何とかしないかんというのが、生物多様性の国家戦略でございますが、定期的に見直しをやっておりますが、見直しするたびに、危ない種がふえるところでございまして、国レベルで、トノサマガエルまで絶滅危惧種にリストアップされたということでございます。
その理由が、放置する森林とともに、シカの食害というのがございます。私は、このスライドの下にコメントを書いたのですが、攪乱依存生態系というのがございます。これ、攪乱というのが、例えば、台風であるとか、洪水であるとか、そういう一見マイナスに見える攪乱が、これが次の世代を生むダイナミズムになっていることがあるということです。これが劣化しているというのが、絶滅危惧種がふえている大きな要因でございます。これを人間がかわりにやっていたのが、里地・里山かもしれません。京都府でも立派なレッドリストがつくられておりまして、この前、更新されたやつで申しますと、ふえていっておるということでございます。
これも減らないようにするというのが日本の国際公約なので、これは何とかしないかんということでございます。私は力もないのですけれども、今、京の「和の花」というのに焦点を当てまして、京都の文化というのが、結構、生物多様性に支えられておったので、そういうものを何とかしようというので、京の「和の花」を何とかするというプロジェクトを立ち上げて、いろいろやっておるところでございます。
絶滅危惧種というと、まさに先ほどの、例えば、こういう種類になりますが、アカマツとかツツジとか、こういうのは絶滅危惧種になっていませんが、今、非常に課題がございます。フタバアオイもそうでございます。チマキザサも、ササは今までいっぱいあったので、山の方にとっては収入になるし、まちの方にとっては、まちのお祭りの材料になるということで、自然地域とまちをつないでいたものが、今、大変な危機にございます。こういうことを何とかうまくやっていくためには、その一つのツールが、多分、自然公園の制度をうまく使っていく、使い方を考えていくことだろうと思います。
今、少しまとめておきますと、生物多様性の危機というのは、何種類かございます。森が利用されないことによる危機というのが、国の戦略では第二の危機と呼ばれ、アンダーユースといいます。利用し過ぎの危機は、昔からあるやつでございますが、これを第一の危機と申します。外来種の危機がございます。
それに加えて、私がいつも言っていますが、先ほどの森林飽和と関係しますが、プロセスの危機と申します。これは何かと申しますと、流砂系といって、砂が少しずつ山から出て、海に流れて、それが海岸の砂を供給する。あるいは時々氾濫が起こって、水浸しになるところがあって、そこにフジバカマが生育するとか、そういう危機があるように思っております。
そこで、何とか自然資源をうまく利用する文化を継承する生業とか、新しい事業や制度も含めまして、そういうことをみんなで考えてやっていく、こういうことができたらなと思っております。
だから、森林とか自然というのは、保護一辺倒ではなくて、切って、使って、食べて、再生する。間伐とか下刈りというのはよく言うのですが、実は、今、間伐とか下刈りよりは、主伐とか、あるいは少しまとめてやるパッチ状の間伐といいますけれども、これが必要となっております。
自然は、さわらない、観察ならいいというのがよくありましたが、実は、そうではなくて、子供たちの未来への生きる力に本当に役にたつのは、狩猟とか採集とか栽培の体験です。これを可能にするような場所も、例えば、自然公園みたいなところを考えたら、広いわけですから、うまい景観区がつくれるかもしれません。
里の生業も含めた、単なる森だけではなくて、湿地とか草地とか、かやぶきの里がございます。美山のかやぶきの里が、意外に関心を持っていただいています。あのカヤはどこから来るか。カヤ場がなくなってきています。こういうことを含めた自然環境の保全というのが大事になってくると思います。
そういうことを考えていきますと、単にお金だけのGDP(国内総生産)の世界だけではなくて、GPIという言葉がございます。これは「幸福度」とか、「真の豊かさの指標」という言い方がございますが、そういうことを担保するための国定公園のようなことを考えないといかんのかなと思っています。
そのためには行政だけではなくて、広くみんながうまくかかわり得る仕組みをつくっていくというのが必要で、特に企業さんの関心が高まっておりますので、企業さんもやりたいが、何をしたらいいのかわからないというのがたくさんございまして、京都府ではモデルフォレストが、それなりに一つの受け皿になっておりますが、今回、もっと新たなCSRが考えられるかもしれません。
この利用の仕方ですが、どんどん人が来てくださいというのは非常に大事ですが、ハードルも上げるというのが、逆に価値を上げる、人気を上げるツールになることがございます。ヴェブレン財と申しますが、これは希少になって、少ししかない。お金が非常に高価である。高価になればなるほど、実は人気が上がるというようなことがございまして、例えば、芦生の森は、そんなことになるのではないかと私は考えております。
そういうことだけではなくて、広くそういうことを中心に、里地・里山の暮らしとか、あるいはいろいろな自然も生かしていこうという、NPOだとか自治体のいろいろな団体がございます。ここに掲げておりますのは、以前、京都府さんが調べられた利用のあり方の検討調査業務で報告された内容でございますが、たくさんございますので、種はあると。これ以上に、実は今回、国定公園になれば可能性がある。
そのためには指定は大事ですが、指定する上でマネジメントが非常に大事です。マネジメントというのは、行政がやる、政府によるガバナンスもございますが、いろいろ連携してやるのもあるし、民間だけでやるのもあるし、きょう、コピーを持ってきたのは、IUCN(国際自然保護連合)の資料でございます。先住民と書いていますが、先住民だけではなくて地域コミュニティによるガバナンスとかいろいろあって、問題はそれの連携をうまく図る。そのときのキーワードを下に書いておきましたので、参考にしていただけたらと思います。
例えばですけれども、国定公園の委員会とか、あるいは協議会だとか、マネジメントしていくいろいろなプラットホーム、これは必須でございます。いろいろイシューによって、問題によって、課題によって、いろいろな部会をつくっていく必要があるとは思います。
そのときに、もしも、ある地域を区切って、計画を立てたいということでありますと、生物多様性地域連携促進法というので、その予算も含め、国がサポートするような仕組みもあります。いろいろ可能性があるのではないかなと思います。
例えば、これは思いつきですが、尾瀬がやっているロゴマークみたいなものを公募していくことが、知名度の向上にも役立つだろうとか、それから、少し心配しておるのが、すごくポテンシャルのあるところで、自然が貴重なところを含んでおりますので、数は多くないですが、そこにすごく思い入れのある方がおられます。
そういう方とうまく連携を図っていくというのが大事だと思っておりまして、まずステークホルダーを特定していって、こぼれ落ちないようにしていくというのが大事だと思っております。できるだけ、トップダウンで定めるルールではなくて、そういうところで検討されたルールに、逆にお墨つきを与えていくというような、そういう方向も考えられるのではないかということでございます。
逆に、利用調整だとか、ガイドさんなしではここは行っちゃだめよとか、あるいはここはいいんだよとか、少々のことはできますよとか、そういうルールをきっちり決めていくことが、逆に付加価値を高めていくように思います。例えば、屋久島は、それで、かなりの大きな産業が成り立っておりますし、この前は、岐阜県では条例でガイドつきでないと立入禁止というところもございます。京都府なりに、それなりの決め方をこれからいろいろ検討をされることが、付加価値を高めて、人気を高めていくことにつながるのではないかと思います。
国定公園というのは、その場合に利用するという観点だけではなくて、あることによって、うまくマネジメントすることによって、それ以外の多様な機能がございます。大都市、京都市の荒廃地として、山林を抱えておるわけですから、その適切な管理ということが、都市部の安全・安心とか、健やかな生活とか、こういうことにとって基盤となっているのだよということを、そういうメリットが非常に、今回はあのあたりだけにしても、その恩恵は広く行き渡っているという視点が必要だと思っています。
平時では景観・レクリエーション資源と言えるかもしれませんが、例えば、豪雨のときには、緩衝装置というふうな機能がございます。こんなふうな観点から、グリーンインフラというような言葉がございます。ことし、政府が国土形成計画をつくりました。ここに初めて、実はグリーンインフラという考え方が明記されました。要するに、これまで、防災は防災、自然環境は自然環境というふうな見地で、それぞれ個別に考えていたのですが、これは土地利用も含めて、「生態系インフラストラクチャー」というふうな言い方がありますが、自然環境をインフラとして見ようという視点が、国土形成計画に入りました。この機会に、自然環境もそういう機能を持っているということで考えていただいて、もっと産業的に、6次産業化とか森林環境税、こんなところと連携するようなことがあればと思っております。
参考資料の中に、参考6というのがございます。最後の2枚ほどですが、これは国土交通省の方と、研究会をしておったんですけど、グリーンインフラの考え方について整理されております。これは、要するに、インフラストラクチャーというのは、横ぐしで考えようということでございます。1枚めくっていただいて、都市域、農山村域、流域で、例えば、こんなことが掲げられるねということがございますが、こういう多様な機能に期待した自然環境のマネジメントをやっていくというのは大事だろうということが一つです。
だから、今度、京都府も森林環境税を導入されるそうですけれども、林業のみに目を向けるというよりも、広く森林環境のメリットというのを目を向けていただけたらというのが、私の個人的な意見でございます。
あともう一つ重要な視点が、フィールドミュージアムとしての国定公園でございます。残念ながら、京都は、大阪とか兵庫とか滋賀とか三重とかと違って、自然史博物館がございません。これは昔から言われておるんですけど、自然を生かしたフィールドミュージアムみたいな発想をとれないかということがございます。そのためには、生物多様性だとか自然環境のセンターに当たるようなもの、専門家のいるところですね、拠点をどこかに少しはつくっておく必要がございます。もちろん政策は自然環境の専門の部署はございますが、フィールドミュージアムを担える専門家の人材がいる拠点をつくったほうがいいのではないかなという感じでございます。
これは、現在、御承知のようにアユモドキがいろいろ議論の対象になっております。確かに、いろいろ計画を立てて、アユモドキが絶命しないように、かつスタジアムをうまくつくっていくというやり方があるかと思いますが、あそこのユニークな里地・里山の氾濫原の生態系ですが、そこのポテンシャルを高めていくのかというと、アユモドキだけがおってもあかんわけですね。生物多様性、トータルのことがわかるような専門の部署もこの機会につくられると、行政当局というよりも、これはある意味、マネジメントの専門家を要する機会になろうかと思います。フィールドミュージアムとしての国定公園という考え方も、この機会に検討されたいというのは、私の考え方でございます。
ということで、言いたいことはみんな言ってしまいましたが、最後に、二つの道の説明をしておきます。これはコスタンザといいまして、地球全体の自然の経済価値を初めて計算した人です。これが雑誌のネイチャーに載りました。小保方さんは差しかえたのですが、あれも撤回しましたが、この論文は、まだちゃんと出ております。今、GDPを考えるよりも、むしろ自然共生型の豊かな社会をつくっていく、今、結構分かれ目にあるのではないかというコメントが、ネイチャーに出ておりましたので、これを御紹介して、私からの説明を終わりたいと思います。
どうも、御清聴ありがとうございました。
田中委員
ありがとうございます。京都市内のまちは京都市やから、そこら辺はどうなるのか知らないが、何かやって上流を助けてくださいと。お願いしたいと思います。
荒巻委員長
森本先生におかれましては、本日は本当に大変お忙しい中に、我々京都府議会のために御足労賜りましたこと、心から感謝と御礼を申し上げます。
先生からいただいた御意見、御提言は、本当に自然環境の保護、利用ということについて、新たな視点で考察をいただいて、きょうは大変有意義な委員会となりました。重ねて御礼を申し上げます。
ぜひとも、理事者の皆様におかれましては、きょう、各委員から出ました御意見を十分に踏まえて、これからの府政推進に十分に留意して、また推し進めていただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
閉会
荒巻委員長から閉会宣告が行われた。