◯荒巻委員長
畑村様におかれましては、昭和56年に京都府庁に入庁され、政策企画部計画課長、政策企画部長などを歴任され、京都府を退職後の平成29年には文化庁地域文化創生本部上席調査役として、文化庁の京都移転にかかわる準備等にかかわられ、平成30年4月からは、公益財団法人京都SKYセンター参与兼事務局長として、シニアの健康と生きがいづくりの推進と、自主的な活動の支援に取り組まれ、6月からは、同センター副理事長に就任されたと伺っております。
築山様におかれましては、平成4年に京都府立大学助教授になられ、同大学の教授を経て、平成26年には学長に就任されました。同大学では、地域づくりと生涯学習の関係に関する実証的研究や、現代社会における教育の公共性に関する理論的研究などをされているとお伺いをしております。
さらに、本府が設置する京都府生涯学習審議会の会長や、京都府社会教育委員会の議長として、京都府の社会教育や生涯学習の推進について御尽力いただいていると伺っております。
本日は、そういった日ごろの御活動を踏まえたお話をお聞かせいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、初めに理事者からテーマに係る説明を聴取いたしますが、説明の準備が整うまでしばらくお待ち願います。
それでは、理事者から説明を聴取いたしますが、説明は簡潔明瞭にお願いいたします。
◯片岡高齢者支援課長
高齢者支援課長の片岡でございます。私のほうから最初に高齢化の現状、特に元気な高齢者の状況について、御説明をさせていただきます。着座にて失礼をいたします。
まず、人口の推移でございます。御存じのとおり、我が国では平均寿命の伸長、あるいは少子化の反映をいたしまして、高齢化が急速に進行をしております。国勢調査のデータでございますけれども、高齢化率の推移を見ますと、折れ線グラフの真ん中あたりの数字でございますが、平成17年が20.2%、そして平成27年には26.6%というふうなことになっております。そして、棒グラフのほうが総人口になってございますけれども、平成27年の総人口が1億2,709万人でございます。平成17年と比べますと、68万人の減少となっております。一方で、65歳以上の高齢者人口でございますけど、棒グラフの一番上のちょっと薄い黄色の色がついているところでございますけれども、78万人の増加ということになっております。そして、右半分のグラフになりますけれども、将来推計人口が2025年には団塊の世代が75歳に到達をいたします。ということで、後期高齢者が急増することが見込まれますけれども、高齢者の人口が2040年には3,900万人を超えましてピークを迎えるということでございますが、現役世代の減少によりまして、高齢化率はその後も上昇を続けるということが全国の人口の状況でございます。
京都府がどうなのかということでございますけれども、平成27年の国勢調査によりますと、府内の高齢者の人口70万3,419人でございますが、高齢化率が26.9%ということで、このグラフの一番左でございますけれども折れ線のグラフで26.9%という高齢化率になってございます。2025年には、高齢化率が30%を超えてまいります。そして、2040年には36.4%に達する見込みでございます。後期高齢者の割合でございますけれども、2030年には20%を超えまして5人に1人が後期高齢者になってくるというような状況になっております。
一方で、高齢者がどういう意識でいるかということでございますけれども、これは少し前の内閣府の調査でございますけれども、何歳まで収入を伴う仕事をしたいかという問いに対して、働けるうちはいつまでも働きたいという方が約4割、そして、もう一つ、若い世代との交流に参加したいという方が約6割ということでございます。
もう一つでございますけれども、では高齢者がどういった内容の活動に参加したいかということでございますが、右のほうに囲んでございますが、何らかの活動に参加をしたいという方が約7割でございます。中身を見ますと、健康スポーツが割と多くなっておりまして44.7%、そして趣味が26.3%、あるいは地域行事、こういったものについても関心が高いというような状況になってございます。
やはりスポーツとか、いろんな趣味に参加される方は元気な方が多いというふうに言われますけれども、実際データ的にはどうなのかということでお調べになった調査結果がございます。日本老年学的評価研究機構というところが自治体の協力を得てデータを分析した結果でございますけれども、こちらのほうを見ますと、スポーツの参加状況と転倒との関係ということで、これは要介護認定を受けていない前期高齢者の方々を対象にした調査でございますが、スポーツの参加率が高い地域ほど転倒率が低いというような調査結果が出ております。
もう一つ同じところが調査をしたものでございますけれども、趣味の関係のグループへ参加をしていらっしゃる方の抑うつ状態の関係を調査をされたところ、趣味の関係のグループに参加の割合が高い地域の方ほど、抑うつ傾向だというような結果も出ております。ということで、元気なうちからスポーツを初めとする社会参加を行うことが要介護にならないための予防となるというふうに考えております。
そういうわけで、京都府では平成2年に京都SKYセンターを設立をいたしました。高齢者の社会参加を促進するための取り組みなど、府の元気高齢者対策を担っていただいているということでございます。ここに書いてございますように、主な事業といたしましては、ねんりんピックの選手団の派遣、あるいは、SKYシニア大学の開催、SKYふれあいフェスティバルの開催といったものでございます。
具体の取り組みにつきましては、この後、SKYセンターのほうから御説明をお願いしたいなというふうに思っております。
私のほうからは以上でございます。ありがとうございました。
◯荒巻委員長
次に、参考人の御意見を拝聴したいと思います。畑村様、よろしくお願いいたします。
◯畑村参考人
SKYセンターの畑村でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。座らせていただきます。
私のほうからは、今、高齢者支援課長のほうからお話のありましたSKYセンターの活動状況につきまして、御紹介を申し上げたいと思います。
幾つかの資料を置いておりますので、またごらんいただきながらお願いいたします。
SKYセンターでございますけれども、「健やか」「快適」「豊か」の頭文字をとりまして、SKYセンターという名前をつけております。平成2年に創設をされまして、平成24年には公益財団法人となりまして現在に至ってございます。当センターの目的は、大きく分けまして2つございます。1つ目には、高齢者自身の生きがいづくりでありますとか健康づくり、これを支援すること。2つ目には、高齢者の社会参加でありますとか地域活動、これの後押しをすること、大きく分けまして、この2つの目的で活動を行っております。
SKYセンターがどんなことをやっているかということでございますけれども、このA3の1枚物に体系的にまとめておりますので、これをごらんいただきながら御説明させていただきます。
上のほうには高齢者の相談事業のような非常にベーシックな仕事がありまして、だんだん下のほうに向かいましてリーダーの養成でありますとか世代間交流といったような新しい時代の要請に対応する事業、こういったものをやっております。私どもは余り大きな組織ではございませんけれども、非常に幅広い事業をほとんど直営でやらせていただいております。
それぞれの事業につきまして簡単に御説明申し上げます。一番上の相談事業でございますけれども、右のほうを見ていただくとわかりますように、年々相談件数が増加をしてございます。現在では年間600件を超える相談を受けております。相談内容で一番多いのがやっぱり家庭でありますとか家族の問題、もめごとの御相談が結構多くなっています。2番目が介護とか福祉の相談、こういった形になっております。
こうした状況を受けまして、近年私どもでは、終活、人生のしまい支度の御支援ということに力を入れておりまして、きょうは先生方に、私どもでオリジナルでつくっております、このエンディングノートをお配りをしておりますので、ぜひ一度試しに御記入をいただきまして、ぜひ皆さんに御紹介をしていただけたらありがたいと思っています。また、このエンディングノートの御説明を出張セミナーという形でもやっておりまして、10名以上の集まりでしたら、どんなところにでも私どもの専門家が参りまして、御説明をさせていただきます。交通費だけいただきますけれども、それだけで参りますので、ぜひ御活用いただきたいと思います。
続きまして2段目のところですけれども、高齢者が第2の人生を考えるためのきっかけづくりの事業ということでございまして、一番上にありますのは、皆さんも御出席いただいたことがあるかと思いますけれども、SKYのふれあいフェスティバル、毎年9月に伏見区のパルスプラザのほうで開催をさせていただいております。大体、毎年2万人ぐらい来場いただいているところでございます。
それからその下のところは、情報誌の発行ということで、お手元に2冊ほど置かせていただいておりますけれども、このSKYの情報誌というのが2カ月に1回発行しておりまして、これは読み物的な情報誌でございます。
それから、もう一つがこのSKYNEWSというもので、毎月発行しておりまして、セミナーとか、いろんな催し物の御案内が中心になっていると、こういうものでございます。これも全部私ども職員が直営でつくっております。
それから3段目に参りますと、具体的な活動の支援ということになってまいりまして、上のほうから下のほうに向かいまして、上のほうは高齢者御本人の健康づくり、ケアづくりの支援ということ、下のほうに向かいますとだんだん地域活動の支援という格好に、徐々に目標が高くなっていっているというような形になっております。一番上は、ねんりんピックへの選手団の派遣ということで、毎年200名近い選手団を派遣させていただいておりまして、ことし富山県のほうで11月に第31回ということで開催をされます。そのねんりんピックの選手派遣につきましては、予選会から最終の選手団の引率に至るまで、全てSKYセンターのほうで面倒を見ているということでございます。
それから、真ん中の下あたりになります、SKYの事業の中でも一番大きなものが、SKYのシニア大学ということになってまいります。9月に開校いたしまして7月に終了する10カ月間の大学でございまして、現在、9つのコースに大体700名ぐらいの生徒さんが受講されております。昨日、ロームシアターのほうで修了式をとり行いまして、500人近くが出席をしていただいたのですけども、下は50歳から、最高齢は95歳の方が一生懸命勉強されているという状況でございます。お手元のほうにことしの受講案内のパンフレットを配付しておりますけれども、この大学につきましても、カリキュラムの編成から運営に至るまで、私どもSKYセンターのほうでやっております。
それから、その下のところ、SKYのサークルでございます。サークルの一覧という黄色い冊子をお配りしておりますけれども、現在84のサークルがございまして、約2,000名の会員さんがサークル活動をやっていると。このお世話をさせていただいております。今申し上げましたようなシニア大学でありますとかSKYサークルをやっておられる方々の中から、今後リーダーとして頑張っていただけるような方をSKYの生きがいづくり推進員という形で私どもが委嘱をさせていただきまして、現在、府域全体で119名の推進員の方が、それぞれの地域でいろんな事業を自主的に企画をしていただきまして実施をしていただいているというような状況でございます。
最後に、一番下のところにあります「ねんりんサロン」、これは新しい取り組みでございまして、共生社会づくりということで昨年から始めたところでございます。今現在は、北区の府立清明高校のほうで介護予防の授業に高齢者が参加をいたしまして、実習で授業を一緒に行うという新しい取り組みをやっております。さっき高齢者支援課長の御説明でありましたように、高齢者はできるだけ若い人と交わりたいという希望がございますので、まさにドンピシャリで、授業として高い評価をいただいております。
最後になりますけれども、私どもSKYセンターができたときは、まだ「人生80年時代」と言っておりましたけれども、もう今や「100年時代」というふうに言われておりまして、非常に長い第2の人生をいかに生きがいを持って元気で暮らすかというのは、非常に大きな課題になってくると思っております。そういう中で私どもSKYセンターのほうも、これからも一生懸命頑張ってやっていきたいと思いますので、引き続き府議会の御指導、御支援をよろしくお願いしたいと思います。
御報告にかえさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
◯荒巻委員長
ありがとうございました。
次に、築山様の御意見を拝聴いたしたいと思いますが、説明の準備が整うまでしばらくお待ち願います。それでは築山様、よろしくお願いいたします。
◯築山参考人
失礼します。日ごろ、予算・決算特別委員会でお世話になっているんですけども、きょうは委員会を変えまして高齢社会の安心・安全対策特別委員会で、私の研究に関係してお話ができるということで、きょうは楽しみにさせていただいて参りました。よろしくお願いいたします。
「元気な高齢者の活躍促進」というきょうのテーマですので、私のほうからは具体的な事例を通じて、元気な高齢者に活躍してもらう、あるいはその地域から、あるいは地域に、どんどん出ていっていただくということもそうですし、余り元気のない高齢者にも元気になっていただけるような、そういう活動のヒントを御一緒に考える、きょうはそういう場になればというふうに思います。
まず最初に、結論から先に申し上げたいと思うんですけども、元気であることの一番の基本は「楽しさ」、この一語に尽きます。ただ、楽しさと言っても、いわゆるおもしろおかしい、愉快という、そういう楽しさだけではなくて、むしろ、あることにのめり込んでいく、そのことをしていると我を忘れて時間のたつのを忘れてしまう、そんな夢中になる瞬間、時間という経験ですね、そういう経験としての楽しさというものが、やっぱり元気であるということが人間一番の基本であるということを、まず最初に結論として申し上げておきたいと思います。
それは大人が学習をするという場合も、最大の動機です。子どもたち、小・中・高校生は、やはり進学であるとか将来ということで、その先に目的、目標を持って学びをするわけですけれども、成人の場合は必ずしも何かのためにということではなくて、むしろ、学ぶこと自体が楽しい、手応え、生きがい、やりがいですね、それがやっぱり動機になるということで、きのうのシニアの修了式もそうですけども、参加者のお顔を見てますと、本当に1年たつと、お世辞ではなく若返った印象があるんですけれども、それは、まあそういうことがあるんだと思います。
それから、いわゆる地域の活性化の際にも、その活性化の取り組みがそこの住民にとって楽しいものであることが大事ですし、さらにその活動を続けていく上でも、いわゆる意気に感じてといいますか役割を肌で感じ取って頑張ろうという、もちろんそれもあるんですけれども、それが長続きするためにやはりその活動自体が、その人にとって夢中になれる、没頭できるものであることが基本だということで、元気のための一番の基本は楽しさにあるということを、まず強調しておきたいと思います。
このことが一番象徴的にあらわれるのが、実は高齢者のデイサービスのレクリエーションです。委員の皆さんは、多分見学等されて御存じだと思うんですけれども、中には、これって、楽しいんだろうか、楽しんでいただけているんだろうか、嫌々されているんじゃないかなというそんな場面も目にされることはあるんじゃないかと思うんですけれども、デイサービスのレクリエーションというのは、もちろんねらいとしては、健康増進であったり、意欲をふやすことであったりということがあるんですけれども、それは楽しさがあって、それを動機として皆さんがどんどん一生懸命それにかかわっていくことで、結果的にそういう効果が得られるというものであって、最初から、健康で長生きするためにレクリエーションしましょうという、そういう入り方をしても、なかなかそれは続かないということで、かなりそこに象徴的に出てくるということがあります。
ここからモデル事例ということで、もちろん余りお時間もありませんので、まずは、こういう事例があるということで概略をお話しさせていただいて、後で御質問いただく際に少し詳しいことを、必要であればお話ししたいと思います。
1つは、これはもう私が20年ぐらい前に、四、五年かかわった活動なんですけども、長野県のいわゆる南信地方ですね、飯田市の少し北になりますけれども、そこに松川町という人口1万3、4千人ほどの果樹栽培を産業とする町がありますけれども、この町では健康学習という取り組みが非常に盛んでございまして、もう1種類のスライドを見ていただきたいのですが、この松川町の健康学習なんですけれども、まずテーマが「健康」です。先ほどの統計の説明の中で、高齢者の関心の高いところに「健康スポーツ」がありましたけれども、「健康」というのは自分自身の体に起こる現象ですので、これ以上身近なテーマはないというふうに言えますし、生涯学習の中で一番典型的なテーマというふうに言われているんですけれども、松川の健康学習の場合も、自分の体に起こった変化から出発をして、だんだん外に広げていって、最終的には地球環境問題まで視野に入ってくるという中身なんですけれども。まあ、こんなイメージなんですが。ちょっと座らせていただきますね。
自分自身の健康の歪み、体のおかしさに気づく。それは何が原因かなということで、栄養とか運動とか休養ですね。あるいは生活のリズム。で、その栄養が偏って運動が少ないということがあったとき、では、それはどうして起こるのかというと、生活の変化であったり働き方であったり、そのさらに背景には社会的ないろいろな状況があるというふうに、いわば同心円的に学習を展開していけるという意味で、生涯学習の典型というふうに言われております。
それから、この松川町の場合も「楽しさ」がキーワードになっているということで、これは活動のイメージなんですけれども、まずは身近な地域で、人口1万3千人で大きな町ではないので、さらに、いわゆる区というのでしょうか、田舎で言いますと、小学校区よりもさらに小さい、町内会より少し大きいぐらいの、そういう地域の単位を基本にして、身近な地域で男性同士、女性同士、あるいは40代、50代というふうな同世代で、一番気楽に集ることができて話ができる。で、田舎の町ですので、実は自分の親世代と一緒に何かをするとなると、やっぱり遠慮や気遣いがあってなかなか物も言いにくいので、要するに、職場世代、親世代、青年というふうなことで、世代間交流も大事なんですけれども、まず入り口を低くするという意味では同世代のところというのが実は大事なんだよということをこの町の活動は教えてくれるんですが、それと「楽しさ」の追求ということで言いますと、大体5人から10人ぐらいのグループをつくっています。町も活動の助成をしてるんですけれども、そこでテーマを決めて、自分たちはことしは塩分を控えめにすることでどういう効果が出るかということを勉強しようとか、あるいは、油分のことについてとか、テーマは食が多いんですけれども、そういうテーマを決めて、保健師さんであるとか栄養士さんを、いわばチューターといいますか先生役として招いて学習をするということで、その学習するときには、先ほどの事例ですと、こんなふうにおじさんたちが集まって、まずは自分たちが料理をつくって、それを食べたり飲んだりしながら、健康をテーマにした、まずは保健師さんの話を聞いた後で自分たちの健康チェックをしたりとかということで学習会をするということを農閑期の半年間ぐらいに、月1回のペースでやると。そういう中身でやりますので、まず集まってくることが楽しいですし、そこで自分たちでテーマを決めて、いろいろわいわい言いながら学習をしますので、長続きもするし身にもつきやすいということです。それとこの松川町の健康学習の特徴は、住民健診というのが年に1回ぐらいあるんですけれども、ちょっと検査を終えた後に、内科の先生から評価がありますね、コメントが。そこで、お酒を控えてくださいとか運動をしましょうとか、いろいろ言われるんですが、それを聞いて、ああ、そうだなと、頑張らないかんなと思って家へ帰るんですが、大体、早かったら家へ帰る途中で忘れてしまうとか、よく続いて三日坊主とかになりがちなんですけども、松川町の場合はそれを個人個人蓄積をしていって、あとまた10年20年というスパンで、一人一人が振り返りながら、自分の健康の変化と暮らしの変化を関係づけて考えるような学習をするということで、健診の機会だけではなくて年間、継続的に自分の健康状態を意識をし、食生活や運動に気配りをしと、そういうことができるというものでございます。
それからもう一つ。長野県は実は長寿県ということで有名だということはよく御存じかと思うんですけれども、何年か前には男女とも全国1位になったこともございます。現在でもかなり高位に位置しているわけなんですけれども、その背景には、今の松川町のような健康についての学びの実践もありますし、加えて、いわゆる公民館の活動が非常に活発な県ということで、日本全体の公民館の約1割が長野県に立地をしているということもありますし、小さな規模の町や村の公民館の活動が非常に元気です。その典型というのが長野県松本市の公民館活動で、ここは24万人の人口の市に35の地区公民館、公設の公民館があって、全ての公民館に正規の市職員が主事として配置をされて、地域の委嘱の主事や館長もいて活動をしているんですけれども、さらに、町内会ごとの公民館もありまして、約500の町内会の9割ぐらいが公民館を持っていて、そこで健康とか食をテーマにして学習活動もするしサークル活動もしているということで、そういう活動が展開される土台になっており、この間には、地域の福祉活動に非常に熱心に取り組んできているという実績がございます。また、詳しくは、後ほど御質問があればお話ししたいと思います。
それから京都の関係なんですけども、丹後の与謝野町で私が、4、5年一緒に地区の公民館の活動の活性化事業ということで、町の教育委員会と各地区の公民館の契約を結びまして、1年間こういう講座をします、こんな活動をします、ということで目標を掲げて、それに対し町が援助をするということでやったんですけれども、その時も、私も何度も種々の研修に行かせていただいて、とにかく住民が楽しかったと実感できる活動をもっともっと広げましょうということで、多分十幾つ地区館があると思うんですけども、そのそれぞれの地区館との実践報告会をして、お互い、楽しいおもしろそうな実践を共有して自分とこでも展開するということを重視して取り組みましたし、それがベースになって各地区や、さらに、ちょっと小さい単位の公民館の活動についても、町のほうで手引きをつくったりとかいう活動に広がっていったというような取り組みがございます。
それから、世代間交流に関しては、京都市の場合は、京都市の社会福祉協議会が運営しています老人福祉センターが各行政区に一、二カ所あって、そこで、高齢者と子どもたち、特に上京なんかですと、この近くの児童館と併設されていますので、児童館に来る子どもたちと老人福祉センターを利用する高齢者のところでのプログラムをつくって世代間交流活動を活発にしてきましたが、それをもう10年ぐらい前になりますか、全市域に展開するということで行われておりますし、府域の場合もそれぞれの市町村に老人福祉センターが置かれています。ただ、市町によって、老人福祉センターの設置のされ方はさまざまで、例えば、地域のコミュニティセンターの中に老人福祉センターの機能を模索するところもございますし、独自のところもありますし、いずれにしても老人福祉センターを拠点にして児童館などとも連携しながら世代間交流活動をしているという、そんな実践が京都府の場合でしたらございます。
それから、滋賀県の近江八幡市のお話を。これは、たまたま私の研修室で博士の学位を取った社会人の経営者の方が取り組んでおられる実践なんですけれども、デイサービスは、ある日出かけていきますと、普通レクリエーションのメニューは1種類なんですが、ここの場合は4つの講座という形で毎日4種類のメニューが用意されていて、きょうは何にしましょうね、書道とものづくり、それから音楽と健康、健康は体操ですね、この4つの講座があって、それを選んでするということで、ある意味ではその4つではあるんですけれども、お仕着せではなくて、その日自分がこれがいいなと思うものを選んでやるということで主体性を引き出すことができているという、そういう取り組みで、割と他の施設からも注目を集めた、そんな事例がございます。
こういった形で身近なところから出発をする、楽しさを大事にするということで、住民、高齢者、特に元気を引き出すということができていっている事例が、ほかにも全国的にいろいろございます。
そういう中でキーワードになってくるのは、健康学習であったり、福祉活動や公民館活動もその地区、小地域ですね、身近な地域での小学校区であったり町内会であったり、そういうところを単位にした活動が第1キーワードであるということ、世代間交流、そして、楽しさについても、一定理論的な根拠、ベースもしっかり踏まえながらということが大事じゃないかなと思います。
あと、峰山町の事例。これは、元気な集落づくり事業ということで、丹後の広域振興局の若手の職員と私ども大学の私のような教員、それから学生も含めてチームをつくって取り組んだ事業で、峰山町にある鱒留という地区で、ちょっとここに絵がありますけれども、住民の方に出てきていただいて、その地域をいろいろ調べる、地域の資源を調べたり、生かし方を一緒に考えるというワークショップなんかをしたりする取り組みをしまして、この峰山町の鱒留地区に私が振興局と事業をするということで最初に訪れたときに、住民の方と少しお話をして地域を見た印象は、これは本当に日本中どこにでもある、ごくごく普通の村だなという印象だったんです。果たしてこの村で何か動きが起こるだろうかという印象だったんですけども、結果、四、五年その活動をすることで、それまで、最初振興局の職員が「もうこの地域の人たちは本当に仲が悪くていつも困っているんです。顔を合わせればけんかして」とか、そんな話だったんですけれども、そんなことではなくて、そもそも出会って一緒に何かする気が少なかったということで、この活動を通じてそれこそ、しし肉でバーベキューをしたり鍋をつついたとか、そんなことも含めてする中で、どんどん距離が縮まって、お互いの普段の生活の交流も進むことによって、公民館が非常に古くなっていたんですが新しく建てかえるとか、あるいは、よその地域に行って新しい農業の事例を学んできて自分のところでも始めるとか、また区長さんのところで2回目の区長をみずからやろうとして出てきたりということで、四、五年の間ですけれども随分変化が起こりました。ということで、私のほうで研究の成果を「普通の村が動くとき」というタイトルの本にさせていただいたりしたんですけれども。ですから、つくり方次第で、どんな町、村でも動き出す、元気になる可能性があるんだということを教えてくれたのは、この峰山町の事例です。
あと、少しまとめに入りますけれども、こういった活動をしていくときに、どこでも、その中心となる担い手はまず高齢者、そして女性ということなんですね。で、広井良典さんという、今、京都大学のこころの研究所におられますけれども、元厚生労働省の職員で哲学的な論考の多い先生ではあるんですけれども、これからの人口減少社会といいますか「定常型社会における福祉のあり方」なんかについて積極的によく発言されている方ですが、その方が「地域密着人口」という用語を使って、要するに子どもと高齢者なんですが、子どもと高齢者あるいは女性というのは、いわゆる現役の働き手である男性や女性に比べて、一番地域で生活する、過ごす時間が長いと。いろんな地域の資源や環境の中にいる時間も機会も多いということで、そこを「地域密着人口」というふうに呼んでいるんですが、これは、今から高齢者がふえていくことで「地域密着人口」がふえていくと。そのことは、決してマイナスの意味だけではなくて、地域のことをよく知り、地域で日々生活を営み、そこから何かをつくり出していくという、そういう潜在的な可能性を持った固まりということもできるので、そこに注目していくことが大事だし、それからあわせて、ローカルな地域コミュニティですね、身近な地域、小規模な地域というものがこれからどんどん存在感を増していくんですよということを言っておられたというのも、全くそれは同感なんですけれども、そこで、その高齢者あるいは住民をお客様にするんではなくて、住民自身が自分たちの暮らしに必要な活動をつくり出していく。しかもそれを楽しい活動としてつくり出していくということをしていかないと、冒頭にグラフのお話があったんですけれども、ああいうこれからさらに急速に高齢化が進む中で、やっぱりそこをいろんな公的な制度や、あるいは事業ベースのサービスで充当しようとすると、どうしてもそこは無理が出てきますので、やっぱり住民みずからが自分たちの必要や思いをベースにして活動してつくっていくということに持っていかないことには、非常に困難な状況というのはなかなか打開できないということで、みずから楽しさをつくり出す主人公にということで提起をしておきたいと思います。
最後に、京都府、都道府県の行政の役割とかにかかわってなんですけれども、今るる申し上げてきましたような居場所づくりのようなことであったり、つながりづくりによって、そのほうからの学びを実現して身近な地域に楽しい活動を広げていく、そういう後押しをぜひお願いしたいなというふうに思います。そこでは、実際のアクターとしては市町村行政、自治体としては中心になってきますので、市町村の生涯学習や社会教育事業の支援であったり、あるいは交流を活発にし活動を共有していくバックアップなどということでお願いできたらと思いますし、それから私が現在会長を務めています生涯学習審議会のほうで、一昨年だったと思うんですが、アクションプランということで、生涯学習ステーションですとか、そのステーションの中心の学びリーダーという形の提案をさせていただいております。現在、南山城村の「道の駅」で活動の中心になっておられる方を学びリーダーに選任させていただいて、南山城地域の活動の活性化に取り組んでいるんですけれども、これを徐々に、全国的に広げていきたいということで提案をさせていただいていますので、なかなか予算的には厳しいところもあるんですけども、今後、こういったものもぜひ広げていただくことで、元気な高齢者の地域での活躍の機会を広げていくということにつないでいけるのではないかなというふうに考えております。
ということで、非常に駆け足でわかりにくかったかと思います。また、委員の皆様の御質問をいただいて、詳しいところは紹介していければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
◯荒巻委員長
ありがとうございました。
本日の所管事項の調査におきましては、テーマについて、参考人も交えて委員間の活発な意見交換の場となるよう運営してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、御意見、御見解等がございましたら、御発言願います。
◯浜田委員
どうもありがとうございました。ことしの3月の予算特別委員会のときに、たしか自民党の片山委員だったと思いますけれども、京都は平均寿命でいうと、全国で上から数える順位なんだけれども、健康寿命はワースト2で下から数えるほうが早いということを言われて、へえーと私は驚いたんですけれども、なぜそうなっているのかというのは、例えば築山学長はどうお考えですか。