平成31年高齢社会の安心・安全対策特別委員会2月定例会

◯荒巻委員
 まず、所管事項の調査についてでありますが、本日のテーマは「人にやさしいまちづくりと建築物のバリアフリー化について」であり、参考人として、一般社団法人京都府建築士会顧問の衛藤照夫様に御出席いただいております。
 本日は、大変お忙しいにもかかわらず、本委員会のために、快く参考人をお引き受けいただき、まことにありがとうございます。
 衛藤様におかれましては、京都大学工学部建築学科卒業後、株式会社設計事務所ゲンプランで高齢者施設等の設計に携わられ、昭和56年に株式会社ゆう建築設計事務所を、平成30年には株式会社ひと・まち・建築設計を設立されました。
 また、平成14年4月から昨年の6月まで一般社団法人京都府建築士会の会長を務められた後、現在は顧問として、京の三条まちづくり協議会でまちなみのデザイン支援に取り組まれているほか、京都府建築審査会の委員等も務めておられると伺っております。
 本日は、そういった日ごろの取り組みを踏まえたお話をお聞かせいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 それでは、初めに理事者からテーマに係る説明を聴取いたします。
 説明は、簡潔明瞭にお願いいたします。

◯和田建築指導課長
 それでは、本日のテーマでございます「人にやさしいまちづくりと建築物のバリアフリー化について」、現在の府の取り組みを説明させていただきます。
 お配りしております「京都府福祉のまちづくり条例」と書かれましたリーフレットをごらんください。
 京都府で、高齢者や障害者を初めといたしまして、全ての人々が安心して快適に生活できるまちづくりを実現するために、平成7年に、京都府福祉のまちづくり条例を制定いたしまして、建築物のバリアフリー化を促進しています。
 1枚めくっていただきますと、「福祉のまちづくりの推進」とございますけれども、事業者には、全ての人に使いやすい施設とするため、高齢者や障害者などのさまざまな利用者の利用特性を十分把握していただき、施設整備でありますハードと人的対応などのソフトを組み合わせた計画を検討した上で、施設整備を行うことが重要と考えております。例えば、小規模な施設では、空間的といいますか、そういった制限等もございますために、ハードとソフトが相互に補完することで、利用者にとって利用しやすい施設とすることなどが考えられます。
 次に、「施設整備の推進」につきまして、全ての人が社会生活を営む上で、より重要と考えられます用途、規模の施設を、特定まちづくり施設と位置づけております。事業者は、特定まちづくり施設を新築また増築・改築、または用途変更をしようとする場合、その計画を整備基準に適合させる必要がございます。
 特定まちづくり施設の用途、規模につきましては、右のページに記載をしております。
 また、バリアフリー法では、不特定かつ多数の者が利用する用途や、主として、高齢者・障害者などが利用する用途で床面積2,000平米以上の大規模建築物については、整備基準への適合が義務づけられております。
 福祉のまちづくり条例では、これらの大規模建築物につきまして、対象規模の引き下げや整備基準の追加を行っております。
 さらに、資料を開いていただきますと、条例に基づく整備基準などの概要を記載をしております。ここには、敷地内の通路また駐車場、トイレ、出入口、廊下、階段、エレベーターなどの整備基準を記載しておりますけれども、これ以外にも、浴室、客室、案内設備等の幅広い項目が対象となっております。これらの項目全てについて、整備基準に適合している場合は、事業者の求めに応じまして整備基準の適合書というものを交付しております。この整備基準適合書は、当該施設が整備基準に適合しているということを利用者の方々に認識をしていただくことを目的としておるため、利用者にとってわかりやすい位置に掲示していただいております。また、整備基準以外にも、より高い安全性や利便性を実現するために、望ましい基準といたしまして、整備誘導基準を定めるとともに、小規模な施設で空間的な施設などにより、整備基準に適合させることが困難な場合にございましては、トイレや敷地内の通路などにつきまして特例を設けております。また、施設によっては、地形や敷地の状況等によりまして、整備基準への適合が困難な項目がございます。これらの項目について、やむを得ない場合は整備基準を緩和することができる規定を設け、この規定を適用した項目については、ソフト面で補完することによりまして、高齢者や障害者を初めといたしまして、全ての人が安全かつ円滑に利用することができるよう、配慮していただくこととしております。
 以上が、人にやさしいまちづくりを推進するために定めております「京都府福祉のまちづくり条例」の概要でございますけれども、本日は、参考人として衛藤様にお越しいただきまして、建築家といたしましてのこれまでの数多くの物件に携わってきた経験をもとに、建築物のバリアフリーに関する現場での生の声をお聞かせいただきまして、今後のバリアフリーの推進に役立てたいと考えております。
 以上で説明を終わります。

◯衛藤参考人
 どうも皆さん、こんにちは。先ほど御紹介いただきました参考人の衛藤照夫でございます。
 御紹介にありましたように、私は、ゲンプランとか、いろんなお名前が上がっておりましたけれども、ゆう建築設計というところで30数年間、設計業務についておりました。その後、去年の9月に一応もう全部卒業いたしまして、建築士会のほうも会長を16年間続けておったんですが、こちらのほうも次の新しい会長さんに譲りまして、そして今は、自分で自分の事務所として、大阪ですが、ひと・まち・建築設計というところを設立いたしました。そこで木造の大型病院を設計しておりますが、これはきょうの話とはちょっと関係ございませんので、割愛いたします。
 それで、こういう形でいろいろ取り組んできた内容で、一般的にバリアフリーと言いますと、「人にやさしいまちづくり条例」を遵守して、いろんなことを役所と相談しながら進めていくわけなんですけれども、それではなくて、きょうのお話は少し観点を変えて、どういう設計のときにどんなことを考えるのかとか、あるいはいわゆる施主ですね、施設をつくる方がどんなことを望まれているのかという話を特にしたいと思います。
 それでは、パワーポイントによって御説明させていただきますので、座らせていただきます。
 「建築計画におけるバリアフリー設計」として「建築設計者の視線」という形で書かせていただいています。目次、画面が小さい場合にはお手元の資料をごらんいただきたいと思いますが、バリアフリーについては、先ほど建築指導課長様からも御紹介がありましたように、「福祉のまちづくりの推進」という形で進めていただいていると。それに対して私たち設計者は、この項目の中で書いております、四角の部分ですね。ここに書いておりますように、敷地内の通路・駐車場、トイレ、建築物の出入口等々について考えているわけでありますが、これ以外にも京都府さんのほうから、「こころのバリアフリーの推進」という形で、助け合いの社会をつくっていくことが、このバリアフリーを進める上で大切なのではないかというようなことを言われておりますが、全く私もそのとおりだと思います。
 そういう話が一応ありまして、それを受けて私はきょうは、2)のところに書いてございます「天神の杜との出会い」ですね。「天神の杜」という特別養護老人ホームの設計を手がけさせていただいたのですが、そこで、今まで私たちが考えていたバリアフリーあるいは高齢者の施設というものはこういうものであるという常識というものがあったんですが、これがことごとく覆されてしまったんですね。どう覆されたかというところを、きょうはお話しさせていただきます中で、本当のバリアフリーというのは、こんなことも考えなければならないのかというところをわかっていただければ幸いかと思います。答えとしては、「その人らしい暮らしの創出」というのが、とにかく最終的な目的でありますが、そのようなお話をさせていただこうと思います。そして3番目として、海外の事例を含めまして「個人の尊厳とは」という観点で、施設の紹介をさせていただこうと思います。
 その次に、「特別養護老人ホームについて」ということ、これはもう皆さんもよく御存じのことと思いますので、詳しいお話は省略させていただきますが、老人福祉法によってこれが制定されてきたと。そういう法律等の動き、あるいは措置の時代から介護保険の創設に至るまで、いろいろなそういう制度、法制度の変化によって、この特別養護老人ホームという内容も変わってきております。
 私は、この措置の時代から設計を手がけてきたわけですが、介護保険創設以降のところが特に中心的に私も感じておりますので、このあたりの話を中心としてさせていただきたいと思います。こういう中で、ここに出てきました絵ですけれども、この絵を御存じの方はいらっしゃるでしょうか。「クリアしなければならない行政主導の施設基準」なんて書いておりますが、これは国のほうから出てきたものなんですね。特別養護老人ホームというのは、全室個室、共同生活室があるもの、そしてユニットケア、こんな言葉がよく言われておりますが、これに変わるときに特にこの絵が出てきたわけなんです。人々が共同で暮らす場所、簡単に言えば、食堂あるいは談話室とか、そういうようなところなんですけれども、それに向かって、それを取り囲むような形で個室が並んでいると。10人ぐらいが大体ユニットの一つですので、こういう形が一番すぐれているんだと。だから、共同生活室に面して居室の扉がなければならないと。どうしてもそれが設けられない場合は、1部屋隣までだったらいいけれどもというようなことが言われておるわけです。つまり、長い廊下に面した居室があって、それで、それの行った先にこういうデイルームなどがあるというこのプランはだめだというふうなことを言われるわけなんですね。でも、これが本当にそうなんだろうかということが、またこの「天神の杜」のお話をする中で出てまいります。
 それでは、次に行きますが、特養というのはどんなものかというところの説明はきょうは省略しますが、自分が少しかかわったものをここに挙げております。右手のほうが、これは大阪府摂津市なんですけれども、2000年に介護保険ができてユニットケアができたと。それの、私たちとしては第1号であったわけです。その左側には、京都府舞鶴市なんですけれども、「グレイスヴィルまいづる」というところで、ここはちょっと頑張った形をしておりまして、ここはそれぞれX型をしておりますね。それで、X型の先端にユニットがあって、中心部に共同で人々が出てくる部屋があると。これが昼夜で逆転するというような構成をとったものであります。こういう非常に広域型、100人とか120人とかというような大きなものが特養としてはできておりますが、それ以外にこの「天神の杜」のお話をさせていただきますと、「天神の杜」は、先にこの絵を見ていただきますが、ここは60人の施設でございます。ですから、少し小さいわけなんですね。裏から見ますと、裏というのは西側なんですけれども、3階建てになっておりまして、表から見ると2階建てになっている、こんな構成になっております。つまり、敷地に段差があるので、入り口のほうは2階建て、2階に入ると。そして、半分下におりたところにもう居室があって、合計3階建てという、こういう形になっていますが、この表を見ていただいて、2階建てですからかなり低く見えるわけですね。その周りにありますのは、実はこれ住宅なんです。この住宅があるために、なるべく低い建物にしようと。要するに、バリアフリーというのは、自分自身の利便性とか円滑な行動のためにもありますが、それ以上に地域のためにもバリアフリーというのが必要であると。地域がそういう住宅がたくさんあるところに建って、大きなものが建つということが、果たして本当に、人々の何かこういう暮らしにとってどうなんだろうと。同じような高さの建物にしていくということも、ここでは考えられたものであります。
 一つ戻りますが、ここで、先ほどちょっと申し上げましたように、我々が持っている高齢者施設の常識というものがことごとく覆されたと申し上げたんですけれども、そのことをここに書いております。右側の青いところが、私たちがずっと培ってきた常識なんですね。例えばですけれども、車椅子介護のためには広い玄関が絶対いると。で、入りやすい玄関でなければバリアフリーとは言えないと。そのとおりでありますけれども、そして、食堂も広くしなければ、車椅子の入居者が動きますから、十分な移動ができない。あるいは、安全性のために廊下には手すりを設けなければいけないとか、これは下のほうでまた書いているんですけれども、スタッフステーションからの見通しをよくして、何か事故が起こったらすぐ飛んで行けるようにしなければいけない。こういうのは全部常識なんですね。素早く配食するために大きなカートが動くと。それが動けるようにしなければ職員の負担軽減にも当然ならないとか、あるいは、介護、不公平さをなくすために同じようなプランで全部つくらなければいけないとか、こういう等々が書かれております。そういうことに対して、この「天神の杜」さんに行ったときに最初に言われたことは、「玄関を狭くしてくれ」と言われたんですね。「えっ、広くなければ車椅子困るでしょう」と言ったら、「そんなもん十分や」と。「人が十分対応すれば、狭い玄関で一人一人の顔を見ながら入ってもらうことができるから、狭くていいんだ」と。あるいは「食堂はどうですか」と言うたら、「食堂もそうだ」と。食堂も広い食堂で、がらんとしたところで食事を食べても何もおいしくないだろうと。だから、そういう介助者とともに、あるいは入居者が親しく憩えるような場所というのは狭くていいんだと。「スタッフステーションから見えなくてもいい」とおっしゃるんですね。それはなぜかというと、スタッフステーションから見て飛んで行くようじゃ話にならないと。もうその個人個人が今どんな状況にあるかというのを施設の職員が把握していて、そして、今何をしているか、「そろそろ危ないかな」あるいは「そろそろ何か次の動作をしなければいけないかな」と思ったら、そこで飛んでいけばいいんじゃないかとか。それから温冷配膳車の大型版を使うと、普通ここは入居者にとっては自分の家なんだと。自分の家にそんな機械的な大きなものが入ってくるというのはおかしいんじゃないかと。だから、人がかついで持ってくれるぐらいのボックスで食事は配食するんだと。これも10人だからできるんですけれども、そういうことを言われるわけなんですね。
 で、食堂についてなんかも、また次の写真を見ながらいろいろお話をしたいのですが、項目だけを申し上げますと、6人掛けの食卓というのはやめましょう。でこぼこのある廊下、これが欲しい。廊下も居住空間なんだ。公私である施設内の空間、施設内は公の場所と私的な場所と分けようというような言い方なんですね。そうしなければ、お年寄りが私の空間にいて、そこから外に出ていくという、そういう経験が味わえないという、こういう意味で言っているわけなんです。そのほか、トイレについては、共用の広いトイレは当然あるんですが、それ以外は居室についていると。機械浴というのはなるべくやめたい。だけれども、どうしようもなく硬直した人のために1台だけ機械浴は入れる。機械浴でどんどん人を入浴をさせて1週間に2回入れるからいいだろうというのは、おかしい。あれはもう人間の尊厳を無視している、こんな話ですね。で、共同生活に面する居室という話もあったけれども、共同生活室に面したところの騒がしいところにいたくない人もいるじゃないか。だから、それだけではない、いろいろな多用な居室をつくるべきだというようなことですね。
 それからユニット間の交流というのは当然あってしかるべきだという、こんな話がありました。その辺をちょっと写真で見ていただきたいと思います。一つ飛ばして、これはユニット玄関なんですね。ここは、そんなびっくりするようなことはないんですが、こういうふうな住宅の入り口のような雰囲気にしたいというところで、各ユニットを全部違うデザインにしろというのが、このときに下った施設の要望でした。で、この左側にあるところなんですけれども、これはある一つのユニットの玄関ですから、ほかのところはちょっと扉のデザインが違うというふうな理解をしておいてください。
 そして、これが共同生活室なんですね。何か雑然としていると思われませんか。これがいいとおっしゃるんですね。これはどんなふうにいいのかということなんですけれども、まずいろいろ言葉で書いていますが、配膳車が入れない食事の提供方法として、かついで何ですかね、温冷ボックスみたいなとこに入れたもので食事を持ってこられると。そこから出して、このちょうど真ん中にいる人が簡単な御飯をよそったり、おつゆを入れたりしているんですが、そうやって配ると。それから、テーブルや椅子が整然と並んでいないですね。手前には、一人だけ座っているようなテーブルもあるんです。要するに、その人たちがどういうところに座りたいか、それに応えようというわけなんですね。そのために、この上の照明器具は、自由にどこにでも動くようにしてくれると。こんなことを言われたんです。
 それから、スタッフステーションが要るのかという話になって、スタッフステーションなんか要らないと。職員は入居者さんとともにずっと生活をしているんだから、常に見ていると。どこか部屋が要るとしたら、それは、この簡単な厨房なんですね。厨房の一番端っこにパソコンを置いて、そこで作業をすると。そんな形ですということなんです。これは逆から見たところなんですけれども、左の写真は、職員が入居者と一緒に食事の配膳をしていると。おつゆを入れたり御飯をよそったりしていると。このようなことがあります。そして、これは共同生活室に引っついた茶の間みたいな所なんですけれども、ここもいろいろな作業をする場所でもあると。もう職員と入居者は一緒になって、混然一体となってと行っていると。ここまでやっていたら、安全性の配慮とかいうのも、すぐさまできるという言い方は、間違いなくできそうなんですね。
 それから、この次の写真ですけれども、これはユニット内の廊下なんですよ。廊下が真っすぐか真っすぐでないかという、でこぼこのある廊下をつくってくれと言われたんですけれども、それに近い所なんですね。途中に、こんな障壁みたいなものを設けているんですが、この障壁は何かといったら、そこに花を置いたりするところに、ちょっと雰囲気を変えて、こんなふうに、透けて見えるんだけれども割とでこぼこして、あたかもここがもう居住空間の一つだと言わんばかりの場所にしていく。で、現実に廊下でしか食事ができないという人もいらっしゃるんです。そういう人にも応えようということなんですね。でまあそんなことがありまして。
 さて、浴室に移りますが、浴室は、2つの浴室が見えております。これはワンフロアといいますか、2ユニット・ワンフロア方式というのが、こういう介護では一番いいと僕らは思っているんですが、2つのユニット、10人ユニットが向かい合わせになっている。それぞれ玄関の形は違うと。でも、向かい合わせになっているから、職員が両方を見ることができる。夜間は、例えば1人が両方のユニットを見ることができるというメリットがあるので、2ユニット・ワンフロア型というのをいつも使っておりますが、それなんですね。そうすると、当然、それぞれのユニットにお風呂は1つですから、2つのお風呂が入ってくるということなんです。片方、上のほうは木製の浴槽です。木製はやわらかい感じがして、木のお風呂で檜のにおいがして、ここに入りたいという人ももちろんいらっしゃいます。そして、この下のところですね。これはメトスというところの商品なんですけれども、ここの施設長は、もう絶対このメトスだとおっしゃるんですね。それ以外に、名前は酒井医療とか、いろんなところがありますけれども、そういうところは入れないと。もう絶対ここがいい、長年使ってここが最高だと言うんですけれども、何が最高ですかと聞いたら、一番すぐれているのは、浴槽の一番端っこに少し膨らみがありますが、これをあけると、中に電動椅子が入っているんですね。その椅子が出てきて、そこに近づいてアクセスしたお年寄りが椅子に座って、椅子が上に上がって浴槽に入れるという、まあ、リフト浴なんです。リフト浴だけれども、多くの商品というのは、リフトがここに見えたままなんですね。で、かなり高機能な感じというのもありますけれども、ここに椅子が見えていると。で、見えていたら何でだめなんですかと言うたら、椅子なんかで使わないぞと思っている人は嫌でしょうと。そのとおりなんですね。そういうことがあって、椅子は極力見せない。使う必要があるときは出てくる。当然こういうのがいいんじゃないか。これをやっているのはメトスだけだというようなことで、そこを選ばれているということなんですね。何かこう、全部、個人の自立心とか、自立的な動きとか尊厳とか、そういうことに関係するところを、思いっ切りお金をかけてでもやっていらっしゃるというところなんですね。ちなみに、お金をかけているというけれども、ここは贅沢な特養ではないので、坪単価でいったらもうびっくりします。でも今は、世の中、坪単価がものすごく上がってしまったんで話ができないんですけれども、当時は60万円とかいう金額でやっていました。それは一番安い部類に属するような金額なんですが、60万円プラス、あと少しよくするものを入れていくという、こんな発想でつくられています。こういう家であるというようなことを言っているんですが、さっき公私の区別という話をしたんですけれども、それがこの左なんですね。左側の写真は、これ、喫茶ルームなんです。別に、公私と言われてもちょっとぴんと来ないかもわかりませんが、この建物は大きなクロスを壁一面に張って、そして選んだという経過があるんです。もう各部屋全部変えろというような感じで言われたんですね。で、人が自分の家として入ったら、みんな違うでしょう、同じとこなんか入りたくないでしょうと。だから全部違うんだと。と言いながら、それぞれ入る人が選ぶわけにいかないから、それは建築のほうが選ぶわけなんです。施設と一緒になって選ぶんですが、ところが、さて喫茶店を考えましょうといったときに、さぞおもしろいことをするんだろうなと思ったら、「いやいやごめん、喫茶店は白いクロスでいいわ」、これで終わりだったんですね。「どうして白いクロスなんですか」言うたら、「これが公のイメージや」と。公のイメージが今はそんなに悪くはないんですけれども、それでもそういうふうなイメージを逆につくろうと。で、公は公、私は私という、公私の区別をつけて、その人の1日の強弱をつけたいと、こういうイメージで言われたんです。それでこんなことをしてきました。
 次のことは、「天神の杜」とはちょっと関係ありませんから、もう簡単にしか言いませんが。私たちはいつもこういう施設を考えるときに、高齢者がどんどん重度化していくというところが、非常に大きなポイントになっています。重度化にいかに対応できる施設をつくるかということは、建築家としてやるべきことではないかなと今、思っています。そういう話で、幾つかつくっているのは、窓のあるトイレをどうしたらつくれるかというような話とか、こういうふうに非常に周りの壁が全部取っ払えるようなトイレを使って、トイレとベットを近づける工夫ができないとか、また最近では、これ以上のものが出てきまして、ポータブル型のトイレですね。ベットサイド水洗トイレというような名前がたしか商品についていると思いますが、部屋の中に、大体腰壁のあたりに汚水の配管を仕込んでおいて、便器そのものを持っていくんです。そして、接続すると。そうすると配管があるところならどこでも持って行けると。特に今ここで僕らが一生懸命つくって、扉があくようにしたんですけれども、これが配管さえしておけば非常にたやすくできるわけです。ベットのすぐ横にトイレを持っていく。そうすると、半分寝たきりになっている人も、下におりるぐらい何とかなるんですね。例えば足をおろして、そしてその辺をつかまり立ちしてトイレに移譲できるという。これも一つの、僕はもう究極のバリアフリーかと思いますが、本当に自立、自分でトイレに行くということがいかに大切かということがあるんですが、これでやっていくと。今、こんなふうにして重度化の話をしていますが、「天神の杜」さんは、「うちはかえって軽度化していくんや」と言って笑っていますけれども、そればっかりじゃないです、重度化される方も多いんですけれども、それと認知症の方が物すごく多いです。90%近くが認知症だと言ってました。だからこの認知症対応というのは、これからもう避けて通れないと思います。
 それで、「天神の杜」の話では、きょう言いたいことの大部分が言えたんですけれども、ここでオランダ、スウェーデンの認知症施設を見たときに、やはり、一つの気づきとか驚きがありましたので、見ていただこうと思います。ここからは少し簡単になりますが、ストックホルムとオランダのほうに行って、アムステルダムに行って見たものです。皆さんも御存じの施設かとは思いますが、スウェーデンのほうは、シルビアホームというシルビア王朝の名前を冠した施設です。ここでは、認知症について、非常にしっかりした柱、フィロソフィーを持っていらっしゃいまして、ここに1から4まで書いてありますように、まずはスタッフ、親族のチームワークがいるんだと。2番は本人中心。とにかく本人が中心になると、本人がどうである、こうであると考えなければ意味がない。本人のためにならなければ何の意味もないと。そういうことをまず2番で言って、3番は、この本人を中心としたコミュニケーションをつくれなかったら、これもだめだと。4番目に、これらに関係する人、介護する人も介護される方も、全部が同じ情報と考え方を持つことが絶対に要るんだというようなことを最初に説明されるんですね。これをかなり強く説明されまして、実際にやっと見に行けたと。ここにいろいろ、認知症の場合にはどうしたらいいかということですけれども、認知症ケアにマスのケアはないなんてことを言って、全て個別だと言われたのを聞いて、「はあ、なるほどな」と思ったんですけれども、それがちょっと絵のほうで見ていただいたらどうかと思います。
 これ、モデルルームなんですけれども、この派手な色、このトイレなんだと。この右側ですね。でも、要するに認知症の人は、行ってもトイレがどこかがすぐわからないと、こういうわけなんですね。だから、もうここまではっきりした色がなければわからない。それだけではなくて、左側にちょっと姿見が少し写っておりますが、例えば、入り口のところから入るときに、すぐ姿見が目の前にあったら、そこに写っている人間が誰かわからないから、人が入っていると言って帰ってくる。そして、そのうちに漏らしてしまうというようなことがあるんだろう。あるいは、入るところで敷物を敷いていたら、そこは黒かったら、そこは底なし沼に見えるんだというような話とか、それから左側は食卓ですけれども、食卓は食事がはっきりわかるように、白っぽい食事のときは黒っぽいお皿、その逆は逆にするとか、こういう話をされるわけです。
 もう一つ、僕、これは大事だと思うんですけれども、精神科の病院をたくさん設計させていただいたんですけれども、そのときでも、いわゆる禁忌と言って、してはいけないということを言うと、人間はかえってしたくなるという言い方もあるんですが、すごくいらいらしてきて、興奮してしまうと。だから、この本棚は、実はクロスなんですね。クロスで、本棚の絵がかいてあると。ここ扉なんですけれども、向こうに行ってもらっては困るところにこれを使うと。そういうことが大事ですよというようなことを言っているわけですね。
 それから、お風呂の話はどこか出てこないか。すると、口頭になりますが、風呂に入るのを嫌がると。それは、風呂が温かくて気持ちがいいということが認識できない。自分の体がどこまで自分の体かということもわからないと。そういうことを当然、我々は察知してやらなければだめだろうというようなことを言われたと。そういうところを聞いて、ちょっとショックを受けながら行ったんですけれども、次にオランダに行って、ホーグヴェイという、認知症村ってこれも有名ですね。スーパーマーケットがある認知症村やと。5,000坪の敷地に建物が建っていると。270人ぐらいでしたかね、ちょっと今忘れましたが、200人強の人がユニットに入って、いろいろ自由な暮らしをしていると。で、ユニットに入るというのは、どんなユニットがあるかというと、これはオランダですから、インドネシアを占領もしてましたですよね。ですから、インドネシア風の暮らしをしたい人のユニットとか、屋外で遊びたい人のユニットとか、そんなような緩やかなものでつくられているんですね。ただし認知症ですから、この施設からは出られないように上手にしている。そこでも先ほどの禁忌という話があって、閉じ込めるという感じにはならないように、事務所を通ってしか出られないようにしてあるんですね。そんなことがあって、ここにスーパーもありますけれども、スーパーマーケットとか、実際にはここで買える人というのは、施設の中で1人しかいないと。その人もお金はわからないというようなことが言われているんですけれども、そういうことも全部込めて、こんな施設をつくっていると。発想はターミナルケア、最後の一番終末期をここで過ごしてもらう。いかに尊厳を持って楽しく過ごしてもらうかというところにあるんだと、こんな話を聞きました。
 これは、実際に行って見て、もうびっくりしたということ以上のことはないんですが、物すごく温かく穏やかな雰囲気でした。それと、すごいのは、確かに出られないように、事務所を通ってしか出られないですから、何となく事務所のカウンターを迂回して行ったら出口があるんで、僕らもそうやって出るんですけれども、それで自然と見ている、監視しているわけですね。勝手に出ていかないように。そういうところがすばらしいなあと思って、いろいろなヒントをいただけたんで、本当にうれしかったんですけれども。
 もう一つは、このシアターというのがここにありますけれども、シアターが本当にあるんですが、ここで映画をしたり、あるいは音楽会をしたりするけれども、それ以上に会議室もあって、それは一般のこの近辺の人たちが会社の総会をそこでしたりすると。そういうふうに実際に使えるようにしているというようなことを言われていました。
 以上が、北欧の施設のお話なんですけれども、ここで感じたのは、本当に究極の、個人の尊厳とか自立心とか、そこを本気で何とか生かしていこうという。これは実は、種と仕掛けがありまして、保険なんですよね。保険というか、何と言うか介護保険と言うんでしょうか、保険じゃないですね。そういう補助金というものがすごく国として、かなりの額が出ているんです。一人の人がここの施設に入って、日本円にして1カ月間70万円ぐらいかかるそうです。70万円のお金を払って入れる人はいないです。ではこの国にはいるんですかと聞いたら、この国にもいませんと。70万円なんだけれども、それを払える人はよっぽどお金持ちの人で、お金のない人は国が払いますと、こういうことを言ってました。そんなふうな制度の中でしかつくれないのかもわかりませんが、建築的には物すごく参考になった事例でした。
 一応、私の話は以上なんですが、こんなふうにバリアフリーと言ったときに、簡単に言ったら、いろいろなバリアフリーがあるなということなんですけれども。この辺が僕にとっては、大きな参考になりましたけれども、皆さん方がどうだったかというのはちょっとわかりませんが、以上でお話をまとめさせていただきます。
 どうもご清聴ありがとうございました。

◯荒巻委員
 衛藤様、ありがとうございました。説明はお聞き及びのとおりでありますが、もとの状況に復すまでしばらくお待ち願います。
 本日の所管事項の調査におきましては、テーマについて、参考人も交えて委員間の活発な意見交換の場となるよう運営してまいりたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 それでは、御意見、御見解等がございましたら、御発言を願います。

◯秋田委員
 ありがとうございました。去年、ちょうどドイツ、オランダに行ったときにこの施設を見てまいりまして、本当に一人一人リフトに乗せて、リフトの体験もしてきましたけれども、ああ、すばらしいなと思いながら、さあこの国でどこまでそれができるのかなというのがやっぱり一番の。今、聞いていますと、認知症でも一人一人に対応は違うという話ですね。本当にそのとおりだと思いますし、実は私は民生委員をしていまして、地域ケア、包括ケアとか、毎月会合をやっているんですけれども、なかなかそのバリアフリーのところまで、実際のところ地域の福祉をやっている人も、地域の活動をどうするのかということのほうが、そこにどういう人を選んでくるのやというのが大変で、個別にはなかなか家族にならないと、なかなか対応できてませんし、個別になるとやっぱり、その地域の民生委員や福祉のボランティアの方々も入っていけないところがあるんですよ。そこはやっぱり役所に対してお任せをして、まあ役所とかそういうところでどう対応していただけるのかとなってまいりますし。
 きょうは本当に、質問にならないんですけれども、この領域へ入ると、本当に個別の問題で個人個人がやっぱりやっていくのが、ただまあ私もおふくろで経験があるんですけれども、なかなかその、自分が認知症、ぼけ防止の、ちょっとぼけ具合を見てもらいに行こうかということ自体、拒否しますね。「ぼけてない」と言いましてね。それで、やっとの思いで連れて行って、いろんな質疑を書いていると、「こんなばかな質問するな」と、「私を何やと思うてるのや」と、こう来るわけですね。ところが、それ見ていると、やっぱりおかしいんですよ。それにともに気づく家族の寂しさといいますか、何かがあって。それから、「デイサービス行こうか」と言うたときに、「そんなもん絶対行かへん」言うのやけれども、行ったら行ったで結構カラオケ歌うて「楽しいな」とかね。具体的にはもう本当に、一人一人にきちっと家族なら行かなければならないのやけれども、地域ボランティアの人たちがそこまで行けるかというと、なかなかそこまで行けない。ただ、こういう事例集とか、たくさんの紹介集をしていただいて、行政としてはいろんなメニューがありますよと、幾つかのね。その中で予算も限られていることですし、そういうように思うんですが、先生としてはどのような、これをし出してこうやというのを、わかっていただけると言いますかね。

◯衛藤参考人
 総合センターのほうは、うちの元いた事務所がお手伝いさせていただいていますんで、またその中で。
 もう僕は関係ないですが。

◯荒巻委員
 衛藤参考人におかれましては、大変お忙しい中、参考人として本委員会のために御出席をいただき、貴重な御意見を述べていただきましたことを心から感謝と御礼申し上げます。
 本日いただきました御意見につきましては、今後の委員会活動の参考にさせていただきたいと存じます。
 また、理事者各位におかれましては、本日、各委員から出された御意見・御見解等について、今後の府政の推進に当たり十分御留意をいただき、府民のため、なお一層の創意工夫をされるよう、お願いいたします。
 それでは、参考人に御退席いただきますが、引き続き「委員会活動のまとめ」等を行うに当たり、関係理事者の交替がございますので、この際、暫時休憩いたします。
 なお、委員会は、午後3時10分から再開いたしますので、よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

◯荒巻委員
 それでは、閉会に当たり、私からも一言御挨拶を申し上げます。
 昨年5月に委員長に就任して以来、池田副委員長、北川副委員長を初め、委員の皆様方には、委員会活動の円滑な運営に格段の御協力をいただきましたこと、また御厚情を賜りましたことを、感謝と御礼を申し上げます。
 事務局の皆さんもいろいろとお世話になりました。ありがとうございます。
 理事者の皆様方におかれましては、この間、各般行政の推進に大変な御尽力をいただき、そしてまたさまざまな質問に対しても真摯な御答弁を賜りましたこと、本当に感謝と御礼を申し上げる次第でございます。
 この委員会では、高齢者の日常生活への支援策の充実、犯罪被害や事故の防止、生きがいづくりの場の提供及びバリアフリーの推進等による高齢社会の安心・安全を確保するための対策に対して、積極的に調査研究をしてまいりました。
 この1年間を振り返ってみますと、6月定例会では、「元気な高齢者の活躍促進について」というテーマで参考人を招致し、意見交換をしました。元気な高齢者であるためには、物ごとに対してのめり込んでいくような意味での楽しさが重要だとお聞きをしました。その中で、京都SKYセンターがスポーツサークルやシニア大学の支援等を行い、高齢者の生きがいづくりに貢献されているということでありました。昨年8月に実施した管外調査では、大牟田市や福岡県の取り組みについて調査を行いました。福岡県の「『70歳現役社会』づくり推進事業」については、なぜ70歳現役社会なのかというと、「何歳まで働きたいか」という問いに対して、高齢者の7割が、70歳以降を希望されたと伺いました。そのことから、70歳を超えた方に対しての就労支援策を行い、支援することで、結果的に先ほどの楽しさ、生きがいにつながってくるのではないかと感じました。こういった他府県の施策もぜひ取り入れていただき、高齢者の活躍ができるような支援を京都でもお願いしたいと思っております。
 12月定例会では、「高齢者を狙った特殊詐欺被害の防止について」というまた違った観点での意見交換を行いました。特殊詐欺被害については、認知件数が過去最悪の水準にあり、その中でも高齢者の被害が多いとの報告を受け、参考人のお話も、「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」に遭う高齢者が多いと紹介いただきました。その対応については、知らない番号の電話をとらないことや地域の見守りが重要と伺いました。京都府としても、消費生活安全センターでの相談対応や防犯カメラの設置、見守り活動の支援等、高齢者を守るという観点でも、今後より一層御尽力をいただきたいと思います。
 また、今2月定例会では「人に優しいまちづくりと建築物のバリアフリー化について」をテーマに、先ほども意見交換をいたしました。バリアフリー化は、高齢者を初め、すべての人にやさしいまちづくりを推進するためには大変重要でありますので、ぜひとも推進をしていただきたいと思います。
 最後になりましたが、委員並びに理事者の皆様方におかれましては、御健康に留意され、今後ますます御活躍をされますことを御祈念いたしております。本当に皆様、結びとなりますが、改めて御礼を申し上げます。ぜひとも理事者の皆様におかれましては、「高齢社会の安心・安全」というテーマでございましたので、その推進に、この歩みをぜひ、また「高齢者の安心・安全なる京都」というまちづくりを、不断の前進で、ぜひとも多くの府民の皆様が満足できる、そして、高齢者だれもが、安心・安全と思えるような体制づくり、また施策の拡充に努めていただきますようお願いを申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。
 本当にありがとうございました。

あらまき隆三

荒巻隆三
(あらまきりゅうぞう)

  • 昭和47年10月27日
    京都市生まれ
  • 元株式会社ワコール社員
  • 元衆議院議員
  • 自民党府議団 代表幹事
  • 議会運営委員会 理事
  • 危機管理建設交通委員会 委員
  • 文化スポーツ振興特別委員会 副委員長

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