平成19年12月定例会 (第5号) 一般質問 討論

◯荒巻隆三君
自由民主党の荒巻隆三でございます。質問に先立ち、議長のお許しをいただきまして、一言ごあいさつをさせていただきます。
 京都に生まれて35年、私は、本年の4月の統一地方選挙におきまして、東山区の皆様を初め多くの府民の皆様から大変な御支援を賜りまして、歴史と伝統に輝くこの京都府議会に送り出していただきました。そしてまた、この壇上におきまして質問をできますことを大変に光栄に思い、改めて皆様に感謝を申し上げる次第でございます。もとより微力ではございますが、府民の皆様の未来に誓って全力を尽くす覚悟でございます。東山で40年御活躍をいただいた高山寛元京都府議会議長に対しても恥じないよう努めてまいろうと思っております。
 山田知事初め理事者の皆様、先輩議員の皆様、同僚議員の皆様の温かい御指導を心よりお願いを申し上げます。
 また、このたび初めての一般質問の機会をお与えいただきました自由民主党議員団の先輩各位の御配慮に、重ねての感謝を申し上げます。
 それでは、さきに通告しております数点につきまして、知事並びに関係理事者に質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まず、家庭支援総合センターについて質問させていただきます。
 総合センターは、家庭問題を総合的、専門的に対応する機関として、現在整備に向けての準備が進められているところであります。家庭問題といっても、その背景にはさまざまな問題がありますが、その多くは児童虐待やドメスティック・バイオレンスが中心ではなかろうかと私は思っております。
 児童虐待やドメスティック・バイオレンスといった虐待は、最近でこそメディアでたびたび報道されることがありますが、潜在的なケースはかなりの件数に上ると推定されます。その背景には、家族内のこととして、虐待する側もされる側も、虐待の事実を隠す傾向が強いことが原因となっております。また、慢性化した虐待の場合、当人が何も反応しなくなるということもあり、露見しがたく、当事者が言い逃れしやすいという問題も見られます。
 これに対し、どのように第一線機関である市町村や介護保険事業者等をバックアップしていくのか。課題対応に必要な関係機関調整、NPOを含む関係機関等とのネットワーク化の促進や専門職員等による市町村職員対象の研修・会議の企画・運営等、各種福祉関係情報の収集・蓄積・発信機能をどのようにしていくのかが大事であると私は考える次第でございます。
 私は、その中で、特に福祉の視点というものを機関連携のもとで、虐待の問題にどう生かしていったらよいのかという点について質問をさせていただきます。
 アメリカなどでは、ドメスティック・バイオレンスなど問題とされるケースに対し、事柄を組織横断的につなぎ、対処するといった福祉は実践の科学として、いわば「福祉」と「警察」でユニットをつくり、通告があった段階からペアを組んで動き出していくといった事例もございます。この場合、事実の認識をつかんだりしていくのは警察、そして福祉の方は、いわば寄り添う視点として、被害を受けた者に対してしっかりと面接をし、ケアを行う、あるいは保護をしていく、そういうふうな役割分担をしながら取り組んでやっていくべきではないだろうかというふうに思っております。
 この福祉の視点というものは、被害者に寄り添うと同時に、加害者に対しても寄り添っていかなければならないと思っております。しっかりとした事実の認識作業を行い、虐待の事実を見つけていくことも大事であります。そして、そこから指摘をしていくことが大切でありますけれども、虐待をなぜやってしまったのか、そうせざるを得なかった人生というものをプロファイルや分析していく、そういう姿勢も大事であろうと思っております。
 虐待を受けた方、また逆に虐待を行ってしまった方にも、それぞれに寄り添っていくことが再発防止や未然防止に向けた取り組みへの基本姿勢になってくると思っております。
 現在、整備が進められております家庭支援総合センターは、これまで個別に立地しておりました児童相談所、婦人相談所、母子生活支援施設といった類似または関連する府の相談機関の機能を統合し、関係機関等との連携を強化し、相談のワンストップ化を図ることとされております。これは、まさにこれまで個別に活動されてきた専門的な「福祉の視点」が一つとなって、さまざまな家庭問題に総合的に対応できる機関として活動されることとなり、大きな期待を寄せているわけでございますが、ワンストップ化によって発揮される機能とはどのようなことを考えておられるのでしょうか。
 また、今回の整備計画では、センターに隣接して東山警察署の建設も進められております。まさに、福祉と警察のユニットを実現できる環境が整うことを期待するのでありますが、司法関与の限定性はあるものの、可能な限りでの警察等関係機関との連携強化について、どのように考えておられるのでしょうか。
 さらに、福祉施設は、地域の方々の理解と連携が大事であると考えられます。地域の中で孤立をすれば、その施設におられる方々は地域に対し疎外感を感じられるのではないでしょうか。図らずも、とどまらざるを得ない方々にとっては、施設に来るまでに抱かれていた不安感といったものが、来訪以降ますます募ることがあってはならないと思っております。そうならないためにも、地域を支える各種団体との連携や福祉施設と地域が一体感を持てるような取り組み、例えば地域住民向けの施設開放を行うというようなことも取り入れる、そういう工夫もされてはよいのではないだろうかと思いますが、どのような展望を考えていけますでしょうか。
 そしてまた、センターが開設されるまでには、いましばらくの時間が必要であると思います。施設運営に当たっても、厳しい状況であることは重々承知はしておりますが、児童虐待に対応する人員を児童相談所で確保されておりますように、センターの人員についても、その専門性を発揮できる体制を確保していただきたいと強く要望させていただきます。
 加えて、児童虐待に比べて高齢者への虐待はメディアでの報道は少ないですけれども、潜在的なケースはかなりの件数に上ると推定されます。あらゆる事態に対処していける、真に府民の皆様の家庭問題のよりどころとして機能を発揮していただきますように、家庭支援総合センターの機関整備の次の段階として、機関構想の中身の検討に早急に着手をしていただきたく重ねて要望いたします。
 次に、繁華街等の治安の確保について質問をさせていただきます。
 去る11月30日、京都を代表する観光地の一つであります八坂神社の西楼門がよみがえり、その荘厳な姿を再びあらわしてくださいました。大変厳しい工期にもかかわらず、府の御尽力もいただき、美しく立派に修復されましたことを地元を代表し、感謝を申し上げる次第でございます。
 私も大勢の地元の皆様とともに、修理竣工式に立ち会わせていただきましたが、開幕の瞬間の心境は、まさに平安末期の歌人・西行が伊勢神宮で詠まれた歌で「なにごとの おわしますかはしらねども かたじけなさに 涙こぼるる」とございますが、同じように、理屈抜きでの感謝の心を感じ、それは、すなわち日本の心・歴史・文化そのものに対する畏敬の念であると思っておるわけでございます。
 観光客にとっても、祇園といえば西楼門か巽橋かというほど、八坂神社西楼門は観光客の記念撮影場所として定着をしており、冬至の日の太陽を真西の方角に望む門構えであり、この今の時期は、15時52分から16時12分の間、西楼門のあけの色がきらびやかに西からの陽光に映えるという、さまざまに大勢の皆様からそれぞれ思い思い魅力を語られる、地域のシンボル西楼門の修復以降、一目見ようと週末や休日の人出は早くも初もうで並みでございます。
 あさっての13日には、この八坂神社を起点として、京都府警察の年末特別警戒が実施予定であり、私も地域の皆様とパトロール活動に参加させていただこうと考えております。
 さて、この京都の繁華街の顔とも言える祇園地域の治安のよしあしの度合いは、特に観光客にとって京都そのもののイメージに影響してしまい、祇園の治安への不安は、京都のイメージの悪化にもつながりかねません。全国を初め海外から訪問していただく観光客に不安を与えることは、「おもてなしの心をもつ町」京都に暮らす我々府民にとって不利益につながりかねない、そのことに危惧をいたしております。
 そしてまた、祇園を有する東山は、職住一体の町の名残が今なお色濃く残る町であり、地域で働き、地域で暮らす、そういった人々の営み自体が全国から観光にお越しになる皆様にとっての魅力の一つでもあります。
 例えば、芸妓さんや舞妓さん。彼女たちも京都府民として、京都が世界に誇る伝統芸能や舞踊を継承し、芸術品とも言える和装をまとい、美しい京言葉をこの現代においてもなお正しく伝承し、まさに、一身に京都文化を担っていただいております。
 しかしながら、四季折々の風習の中で、京都の風景として彼女たちの姿を追う観光客の中に、残念ながらマナーの欠如によって彼女たちを無理に取り囲んで身動きをとれなくしたり、引っ張るといった腕力を行使する、そういった非礼な行為も近年は増加傾向にあり、悪質化しております。
 深夜においても、酔客によるトラブルが絶えません。先日は、折しも西楼門の修理竣工式の前夜、まさに八坂神社のおひざ元である四条花見小路の交差点で、歩行していた酔客と欧米人のお客様を乗せていたタクシードライバーとの間でトラブルが発生し、交差点の真ん中に車両を放置し、路上でつかみ合いをし出したので、警察常任委員である私は、すぐさまに間に入り、タクシードライバーが運転席のあけていた窓の外から暴行を受けたことを訴えるので、両者それぞれ言い分があるわけでしょうから、とりあえず話しましょうと2人をとめ、あとは駆けつけていただいた警察官に対処していただきました。結果、話し合いで和解されたという報告をいただきましたが、私が一番心配していたことは、そのタクシーに乗車をしていた海外からのお客様の心情、お気持ちであったわけでございます。私は、しっかりとおわびを申し上げました。
 観光のお客様に見せてはいけない光景を排除すること、祇園地域の防犯は、京都の風景を守る、保全にほかならないわけでございます。文化はデリケートで無防備なものでございます。だからこそ守っていかなければならない。お仕事で、ひとりで歩いている芸妓さん、舞妓さんもしかり、京都文化を支えてくださるすべての人々も、そしてまた、それら京都を愛してくださる観光客の皆様に対しても、地域に居住する我々は、格調の高い文化都市・京都の地域防犯力のあるべき姿をなお一層実現していけますように、責任感や使命感を持っておるわけでございます。
 年末年始を迎え、これから初もうでを中心に府民や観光客の方々が八坂神社を初めとする多くの寺社仏閣に参拝、参詣されます。この地域を訪問される方々が安心して、「京都に来てよかった」「また来たい」と思っていただくことが必要ではないかと思っております。
 そこで、安心・安全な繁華街等の治安の確保について質問いたします。京都府警察本部が取りまとめております犯罪発生状況によりますと、昨年1年間の京都府内における刑法犯認知件数は約5万5,000件であり、戦後最も多かった平成14年の約6万5,000件と比べると、1万件ほど減少しております。しかし、10年前の平成8年と比べますと、1万2,000件余り増加しており、その内訳を見ると、窃盗犯が約2,600件増加、暴行や傷害等の粗暴犯が約2,100件で2倍に増加しております。
 本府におかれては、このような治安の悪化に対して、「京都府犯罪のない安心・安全なまちづくり条例」の制定や、さまざまな取り組みをしていただいているところでございますが、府民や観光客にとりましては、やはり警察官の存在や警察官の活動というものが一番の安心のよりどころではないかと考えるところであり、京都府警には、この期待にぜひこたえていただきたいと思うのでございます。
 祇園地域を中心とした東山地域は、昼間帯の観光地の顔と夜間帯の繁華街の顔という双方をあわせ持ち、その様相は昼夜により変貌を遂げますことから、警察官の配置や運用というものは、その都度必要とされるフォーメーションにチェンジしていかなければ治安の確保は困難ではないかと考えます。
 そこで、観光地と繁華街の2つの顔をあわせ持つ東山地域等の治安確保について、現在どのような点に配慮し運用されているのか、また今後、治安確保のためにどのような方針を持って臨まれようとしておられるのか、警察本部長の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 折しも、先ほど述べました家庭支援総合センターに隣接する形で、現在、東山警察署の整備が進められております。祇園地域という京都を代表する繁華街を管轄する警察署が新たに生まれ変わり、新しい警察署が治安のかなめとなり、府民や観光客の安心・安全をしっかりと守っていただける立派なものとなりますよう期待しております。
 次に、伝統産業の振興について質問をいたします。
 京都の和装や伝統産業は、千年を超える歴史の中で、繊細で緻密な匠の技とものづくりの魂によってはぐくまれて、日本の生活文化の心を今に伝えてまいりました。西陣織や京焼・清水焼の精緻な技術が、京セラ、オムロン、村田製作所などのハイテク産業の原点となるなど、これらの産業は京都経済の発展に不可欠な重要な基幹産業でもあります。
 しかしながら、生活環境の変化と消費の低迷等により、非常に厳しい状況に陥っております。私の地元である東山区は、日吉、五条、泉涌寺など、陶磁器の工房が集積する京焼・清水焼の生産地でありますが、華麗で繊細なデザインと高度な技術を特徴とし、今日まで日本の陶芸の中核として発展してまいりましたが、売上高、生産量ともに年々減少傾向にあり、流通機構の見直しや販売促進策の必要性が迫られており、課題となっております。
 平成18年版の国の伝統的工芸品に関する消費者意識調査において、京焼・清水焼の認知度は陶磁器31品目中9位でありますが、購入保有率は上位を占めており、今後の産地振興にはマーケティングの基本戦略の再構築とともに、新しいものづくりへの取り組みが必要ではないかと考えます。
 また、材料となる土が豊富でない京都で、京焼・清水焼が今日まで日本の陶磁器業界をリードし成り立ってきたのは、職人さんのものづくりに対するたゆみのない努力のたまものであり、京焼・清水焼が今後も伝統の上に創造を重ね、日本の陶磁器業界の雄となるには、後継者の育成や担い手を対象とした技術・技法の向上を図ることも必要と考えます。
 こうした中、京都府におかれましては、「伝統と文化のものづくり産業振興条例」に基づき、「人づくり」「ものづくり」「環境づくり」の観点から伝統産業の振興施策を推進していただいているところでございます。
 そこで、陶磁器を初めとする伝統産業の振興について今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 さらに、先日の決算特別委員会総括質疑における我が党の植田喜裕議員の質問に対してお答えいただいたとおり、早速、今回の12月補正予算で、来年の「源氏物語千年紀」を契機として、京都の和装・伝統産業の現代の技術の粋を集めた「源氏物語千年紀」匠の技継承事業に取り組まれますことに、強く期待をしているところであり、この事業を具体的に今後どのように取り組んでいかれるのか、お聞かせください。
 以上で私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

◯議長(家元丈夫君)
 山田知事。
   〔知事山田啓二君登壇〕

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あらまき隆三

荒巻隆三
(あらまきりゅうぞう)

  • 昭和47年10月27日
    京都市生まれ
  • 自民党府議団 代表幹事
  • 議会運営委員長
  • 京都地方税機構議会 議長
  • 京都実業団剣道連盟 会長
  • 京都府カヌー協会 会長
  • 元衆議院議員
  • 元株式会社ワコール社員

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